オリに負け越した西武の誤算 突如崩れる先発と救援陣の登板過多のジレンマ

西武・辻発彦監督【写真:荒川祐史】

リリーフとして送り出した田村、森脇が崩れ「もうひとつひと皮むけない」

2年連続パ・リーグ覇者の西武が、本拠地メットライフドームでの最下位オリックスとの6連戦に2勝3敗1分けで負け越した。オリックスは前週のロッテとの6連戦に全敗し、どん底のチーム状態にあっただけに、獅子にとっては大きな誤算といえるだろう。

この6連戦では継投が重要なポイントとなった。5日の試合では1点ビハインドで迎えた6回2死一、二塁の場面で、90球に達した先発・與座を諦め、田村にスイッチ。ところが、この田村が安達に適時打を許した上に、続投した7回にも1死から5連打を浴び、試合を決定づける4点を奪われた。

前日の4日も2点リードの8回アタマから、7回84球で5安打1失点と好投していた先発・松本を降ろし、森脇にスイッチ。森脇は四球で出した走者を自らのけん制悪送球で二塁に進め、大城にタイムリーを浴びた。続く吉田正に対しては“左殺し”の小川を投入したが、まさかの逆転2ランを浴び、敗れたのだった。

辻発彦監督は「森脇も田村も、負けている時にはいいピッチングをしても、接戦となるとああいう形になる。もうひとつ彼たちがひと皮むけない。気持ちの面で弱いのか。勝ちゲームを任せられない。まだまだ力不足というところでしょうね」と嘆いていた。

今季の西武は平井、新外国人右腕ギャレット、守護神・増田が“勝利の方程式”を形成。最速158キロ右腕の平良、ドラフト1位ルーキーの宮川も好調で、辻監督は「昨年までと違い、後ろ(リリーフ陣)は充実している」と自信を示している。

今井、高橋光と相次いで100球直前で崩れていた西武先発陣

“勝ちパターン”の彼らでなく、森脇、田村を選択して敗れたのは“宝の持ち腐れ”にも見えるが、平良、ギャレット、平井が2日と3日と連投しており、使いづらい事情があった。特に平井は昨年パ・リーグ新記録の81試合に登板し、勤続疲労も心配されている。開幕直後のこの時期、シーズンを通して鍵を握りそうな勝ちパターンのリリーフ陣を酷使したくなかったのだろう。

ならば、もう少し先発を引っ張ってみてはどうか。7回1失点、まだ84球だった松本を、辻監督は「7回のピンチ(無死一、二塁)を無失点で切り抜けたところで精一杯」とみた。実際、2年目の松本にとって7回は自己最長タイで、8回はプロ入り後未知の領域。1日の試合では先発の今井が5回までノーヒット3四球に抑えながら、6回に吉田正に許した初安打が痛恨の先制2ランとなり、続くジョーンズ以下にも4連打されて101球で降板している。

6月30日に先発した高橋光も、6回まで無失点に抑えながら、7回に突如崩れ、ロドリゲスに2ラン、続く若月にも中前打を浴び、やはり101球でマウンドを降りた。辻監督の脳裏に、先発がまた100球手前で崩れるのではという“疑念”が生じても不思議ではなかった。

開幕後15試合を終えて7勝7敗1分けの西武。辻監督が「昨年もこんなもんだったでしょ?」と言う通り、2年連続Vを果たした昨年も、ソフトバンクとの開幕3連戦で3連敗を喫したのをはじめ、15試合終了時点で7勝8敗と黒星が先行していた。

ただし、今季はコロナ禍でシーズンが120試合に短縮されており、仮に昨年120試合で終了していたら、優勝はソフトバンクにさらわれていた。自慢の山賊打線にまだ本格的に火がついていない今、投手陣をどうやりくりするか。指揮官の手腕が注目される。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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