夫がパワハラを受け56歳で退職。妻「再就職まで私一人の収入で暮らせる自信がない」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、51歳会社員の女性。夫がパワハラを受け退職に追い込まれ、しばらくは相談者だけの収入で暮らさなければならないと言いますが……。FPの横山光昭氏がお答えします。

共働きです。夫が役職定年を迎えてから、社内でパワーハラスメントされるようになりました。1年ほど頑張ったのですが精神的につらくなり、引継ぎが終了したら退職することになりました。定年まであと4年だったのに、残念です。すぐに仕事が見つかるかわかりませんが、求職活動はすると言っています。

夫が無職の間、私の給料だけで生活することになります。これから夫は退職金も貰うと思うのですが、老後資金のこともありますから、できるだけ貯金には手を付けたくありません。

ですが、今まで別々に家計を管理してきたので、私一人ならやっていけた収入で、夫の生活費まで負担できるか不安です。自分は無駄がなくやってきたつもりですし、夫がどのように給料を使ってきたのかもわからないので、減らせる支出の見当もつきません。

失業が長く続く可能性もあるので、私一人の収入で暮らす方法を見つけなくてはいけないとは思うのですが、およそ半減する収入に対応できる暮らし方を身に着けることができのでしょうか。

支出のやりくりの仕方など、お教えいただきたいと思っています。

【相談者プロフィール】

女性、51歳、会社員(夫、56歳、会社員)

手取り月収:相談者26.2万円、夫22.4万円(2〜3か月後に無収入)

年間の手取りボーナス:相談者約60万円、夫約40万円

貯金額:420万円

毎月の支出の目安:38.5万円

【支出の内訳】

住居費:10.2万円(住宅ローン)

食費:8.3万円

水道光熱費:2.8万円

通信費:1.2万円

生命保険料:3.1万円

日用品代:1万円

医療費:1.4万円

交通費:0.6万円

被服費:0.8万円

交際費:0.5万円

こづかい:6.5万円

その他:2.1万円


横山: 二馬力の収入があったところが、一馬力に半減するのですね。やむを得ないことですが、二馬力の暮らしを維持しようとすると、家計は傾いていくでしょう。早い段階で一馬力でも暮らしていけるやりくりを見つけようと動き始めたことは、賢明だと思います。

夫婦で家計を共有し、支出の優先順位を決めておこう

夫婦別々に収入を管理していたのなら、互いの支出状況を知らないというご夫婦は多いものですし、ご家庭全体としての支出もわからないというケースも多いものです。

相談者さんの場合は上記の家計表のような支出状況でしたが、以前はこのような金額になっているとご想像されていたでしょうか。各人で使っている食費は、2人家族としては高い方といえるでしょうし、共働きで家にいる時間が短い割に水道光熱費も高めだといえます。お二人の支出を合わせると、メタボ化している費目がいくつかあります。このようなところを改めていきたいものです。

支出の削減はむやみにしても長続きしません。まずはご夫婦で大切にしたい支出を明らかにして、それ以外から削減を試みていくと良いでしょう。大切にしたい度合いの高い支出から優先して予算し、順位の低いものは支出の頻度を下げる、思い切ってカットするなど調整していくと、生きがいや楽しみを残したスマートな暮らしができます。

支出1つずつに「必要かな」という問いかけをし、迷うものから削減可能か、自分たちにとっての価値はどのくらいあるのかなど、検討していくと優先度が見えてくると思います。

固定費削減は生活を変えずに支出を下げられる可能性あり

必要な支出かどうかを検討するときには、ぜひ、固定費にも目を向けてみましょう。固定費は仕方がない、変えられない支出と思いがちですが、契約内容を見直すことで、使い方はそのままで金額を下げられたり、少し手間をかければ支払額を減らすことができる場合があります。

通信費の大部分はスマートフォンの利用料だと思いますが、これも通話が多いのか、メールやデータ通信が多いのか等により契約の仕方や通信業者の選び方を検討できます。契約次第では今よりも支出を半減以下にできる可能性もありますから、見直しはぜひするべきです。

生命保険、住宅ローンの見直し方

生命保険は現状に合った保障内容になっているか、不要な保障はついていないかを、中立な立場のFPなどに見てもらうとよいでしょう。目的を明確にすることで、必要な保障に入り直したり、不要なものを削ることで、きっと支出削減につながることでしょう。

また、住宅ローンも金利によっては借り換えを検討しても良いと思います。

(1)ローン残高が1000万円以上
(2)借入期間の残りが10年以上
(3)金利差が0.5%以上

この3つがそろえば借り換えで総返済額が少なくなると言われていますが、最近は金融機関が手数料などを下げているので、金利差が0.5%未満であっても効果があるかもしれません。インターネットでシミュレーションをしてみてはいかがでしょう。

ぜひ一度これらについて見直しをしてみてください。そして、支出が軽減すると思えたら、すぐに行動に移してみてください。動かないと、変わりません。

生活の仕方によっては、貯金からの補てんも覚悟を

支出をいくら下げても、収入がその支出を下回ると、貯金を切り崩さなくてはいけません。ご主人は自己都合退職になるのでしょうから、退職後、3カ月の待期期間を経て、勤務継続期間によって定められた期間、失業給付を受けられます。その間、家計の問題はある程度、軽減されているでしょう。この受給期間内に次の仕事が見つかればよいですか、見つからなければやはり、相談者さんの収入を軸に暮らさなくてはいけません。

家計を見ると、住居費・通信費・生命保険料の固定費で14万5000円かかっていて、相談者さんの収入の約55%を占めます。前述のように固定費の見直しをして支出額が減ったとしても、相談者さんの収入の半分ほどは固定費となると予想できます。つまり、日々の生活費は12~13万円ほどであると見込めるのです。

こう考えると、支出の優先順位を考えながらも、食費が8万円を超えていてもよいのか、こづかいが6万円を超えていてもよいのか、ということに疑問を持って、支出について検討していかなければなりません。支出を収入の中に収めることが最重要事項なのか、食費、もしくは趣味費としての小遣いが優先なのか。それによっても頑張りどころが変わってくるはずです。

発想の転換で、少ないお金で楽しく暮らす知恵をつける

ただ、状況が状況ですし、これから年金生活に近づいて来ることを考えると、少ない金額で豊かに楽しく暮らす方法を見つけておくことも悪くはないのではと思います。それができれば貯金からの補てんが少ない年金生活が送れるでしょうし、老後資金が少なくてすむ可能性が高まります。

残りの現役生活を楽しみたいという考え方もあるでしょう。支出を収入の範囲に収められない場合は、夫の仕事が見つかるまで、貯金を切り崩して暮らすことは覚悟しておきましょう。

どのような暮らし方をするにしても、相談者さんご夫婦の選択ですからそれを尊重したいと思いますが、私個人としては、一時的に踏ん張る期間は収入内で暮らせるように踏ん張り、少ない金額で暮らすとはこういうことだという体験をしてもよいのではないかと思います。ぜひ頑張ってみてください。

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