生活の全て不自由 大雨孤立の西米良・八重地区ルポ

梅雨前線の影響による豪雨で崩落した西米良村板谷の国道219号。住民は急ごしらえの歩道橋で往来している=6日午後3時5分

 熊本県境に位置する西米良村板谷の八重地区(28世帯57人)。4日の大雨で、地区を東西に抜ける国道219号が2カ所で寸断し、住民が車で地区外に出られない状況となっている。同地区では村道の崩落で、5世帯7人が地区の中でさらに孤立したままだ。食料の確保や通院、通勤など生活の全てが自由にならない「缶詰め状態」(住民の1人)が続く地区を訪ねた。
 めくれた巨大なアスファルト、むき出しの地盤―。同地区の東の入り口・板谷トンネルを抜けると、国道219号が寸断された現場が視界に入った。歩道橋が亀裂の狭い場所に急ごしらえされているが、眼下は谷。渡る途中で足がすくんだ。
 その先に村道の一部が崩落した現場がある。一ツ瀬川の支流・板谷川に架かる二つの橋が渡れなくなり、対岸集落の住民が孤立。既に集落外に避難していた8世帯17人は自宅に戻れず、避難所生活が続く。
 「川の向こうに家が見えているのに…」。黒木利美(89)、カネ(92)さん夫婦も4日以降、自宅に戻れず、八重橋近くの公民館で寝泊まりする。連夜の大雨で家が気掛かりな上、自宅に戻った後の生活にも不安が残るという。
 夫婦とも定期的に村中心部・村所の診療所を受診し、国道219号の先にある熊本県湯前町に買い出しに行くことが多かったが、その生活道は同町に入ってすぐの場所も寸断された。国道が復旧しない限り、元通りの生活は見込めない。
 黒木さん夫婦の様子を近くに住む女性(78)が見に来た。「八重地区以外の人も県境を越えて働いたり、買い物や病院に行ったりしている。国道が復旧しないと、皆が困る」。女性は切実な住民の声を代弁した。

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