「虎ノ門ヒルズ駅」ひっそり開業から約1ヵ月、人出は増えたのか

6月6日に開業した、東京メトロ日比谷線の新駅「虎ノ門ヒルズ駅」。日比谷線の全線開業から約56年ぶりとなる新駅ですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、“ひっそり”とした開業でした。

霞ケ関駅と神谷町駅の間に位置し、虎ノ門ヒルズビジネスタワーに直結する同駅の開業で、虎ノ門エリアの活性化が期待されています。開業から約1ヵ月が経過しますが、同駅周辺の人出はどれほど増えたのでしょうか。

スマホユーザーの匿名位置情報ビッグデータから分析します。


新駅「開業効果」はあったのか

調査には、技研商事インターナショナルとKDDIが共同開発した「KDDI Location Analyzer」を使用。KDDIがauスマホユーザーの同意のうえ取得し、誰の情報であるかわからない形式に加工した位置情報データや属性情報をもとに、虎ノ門ヒルズ駅の開業前後の状況を比較します。

調査期間は、コロナ禍前である2月の平日と、6月6〜24日の平日(いずれも1日あたり平均)。調査エリアは、虎ノ門ヒルズ駅半径200mと、銀座線の虎ノ門駅半径200m。20歳以上の男女・数百万人分のサンプルを使用し、国勢調査データと掛け合わせて拡大推計。

まず、虎ノ門ヒルズ駅の「周辺滞在人口」(駅200m圏内に15分以上滞在した推定人数)を分析します。6月6~24日の平日は、コロナ禍前である2月の平日と比べ34%減少。「周辺通行人口」(駅200m圏内を徒歩で通行した推定人数)は35%減少となりました。

新型コロナの感染が拡がる中、ひっそりと開業した同駅周辺はコロナ前と比べると、やはり大きく人出が減少しているもよう。オフィスエリアのため、緊急事態宣言後はテレワークに切り替わったビジネスパーソンも少なくなさそうです。

<長田洋平/アフロ>

相対的に人出が増えている?

一方で、銀座線・虎ノ門駅の周辺はどうなっているのでしょうか。「周辺滞在人口」を分析すると、同期間で34%減少と、虎ノ門ヒルズ駅と同様の結果になりました。

しかし、「周辺通行人口」は41%減少という結果で、虎ノ門駅は虎ノ門ヒルズ駅よりも周辺の通行人口が大きく減っていることがわかります。

これは、虎ノ門駅の利用者の一部が、虎ノ門ヒルズ駅の利用に切り替えたということなのでしょうか。属性としては、40~60代の女性層の通行が相対的に伸びています。

技研商事インターナショナルの担当者は「GPSデータでは駅の利用者数が取れるわけではなく、駅付近の地上の通行人数を見ているため一概には言えませんが、まずはこれらの層が虎ノ門ヒルズ利用に切り変えた可能性がある」と言います。

さらに道路ごとに、徒歩で通行した推定人数を調べると、虎ノ門ヒルズ駅周辺は虎ノ門駅周辺に比べて減少率が低いことが判明。つまり、虎ノ門ヒルズ駅は相対的に人出が増えていると言えそうです。

前出の担当者は、「コロナ禍があるうえ、オフィスワーカーの場合は定期券の買い替えがすぐには進まないため、まだ開業効果は限定的と言わざるを得ない。しかし、今後時期を追うごとに虎ノ門ヒルズ駅の利用が増えていき、周辺の再開発と相まって活性化が進んでいく可能性が高いのではないでしょうか」と分析します。

東京五輪に間に合わせるために、暫定的な開業となった虎ノ門ヒルズ駅。最終的な完成予定の2022年度には、見違えるほど賑やかになっているかもしれません。

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