豪州SC:メルボルンでの新型コロナ感染再発で州境封鎖が拡大。チームは前倒しで深夜の移動を決行

 6月末に再開され、続く7月18~19日の週末に第3戦を予定するVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーだが、現在も進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の余波で、ビクトリア州政府とクイーンズランド州政府による新たな「州境封鎖措置」の実効性が拡大され、7月7日(火)23時59分での“州境ロックダウン”が発表されたことを受け、ビクトリア州を拠点とするチームは急遽パッキングを進めて、深夜にシドニーへの大移動を敢行することとなった。

 当初はこの2州による“移動制限”がアナウンスされたことで、北部クイーンズランド州からの越境が難しいことなどから、改訂版カレンダーで第3戦開催を予定していた南部ビクトリア州ウィントン・モーターレースウェイでのレースがキャンセルに。

 これを受けVASCの運営組織は再び第2戦開催地のシドニー・モータースポーツパークに戻り、史上初となる同一トラック連戦を実施すると同時に、ナイトレースを含む“スプリット・デイ&ナイト・フォーマット”の採用をアナウンスしていた。

 しかし、その後もビクトリア州に位置するメルボルン市街での感染再発と拡大が収まらず、隣接する中部ニューサウスウェールズ州との往来を完全に遮断するため、7月6日(月)の現地時間午前にもビクトリア州知事のダニエル・アンドリュースより、NSW州知事のグラディス・ベレジクリアン、そして豪州首相のスコット・モリソンも賛同する形で「明日の夜、午後11時59分からビクトリア州とニューサウスウェールズ州との州境を閉鎖する」との声明が発表された。

 この発表の影響を受けたビクトリア州に拠点を置く多くのチームは、ロックダウンを避けるために計画より早くシドニーに移動し、サーキット入りすることを決断。VASCシリーズ側もガレージを開放して受け入れ態勢を整えることを決め、そのうえで州ごとにピット割を分けて感染拡大を防止する策を導入するとした。

Triple EightやDJRなど、北部クイーンズランド州を拠点とするチームからは「レースを続行するための努力に敬意を評する」と、ビクトリア州拠点チームへのエールが贈られた

「我々スーパーカー・シリーズは、ビクトリア州の状況を注意深く監視しており、チームは本日の発表に先立って旅行日程を早める準備を開始した」と状況を説明する、VASCシリーズCEOのショーン・シーマー。

「我々は、スーパーカーとより広いコミュニティの健康と福祉を確実に保護すると同時に、彼らの“役割を果たす意欲”を高く評価している。全員が機敏であり続け、すべての政府関係者、関連する医療関係者、およびチームと協力して、安全でコンプライアンスに準拠した方法でレースを行うことを保証する」

 シドニーへの移動を早期に開始したチームのひとつである、チャーリー・シュワルコート代表率いるTeam 18は「すべてのチームメンバーが安全で健康を維持することに重点を置きながらの判断になった」と説明した。

「これらのことは、現時点で確かにTeam18とすべてのビクトリア州のスーパーカー・チームにとって前例のない時間だ」と続けたシュワルコート代表。

「今朝(月曜の)11時に、州境が明日の夜に閉鎖されることを知らされる電話を受け、その30分後にはそれが今夜に早まるとの一報も受けた」

「そこで我々はチーム全員でスクランブル体勢を採り、トランスポーターにマシンと設備を詰め込みシドニー・モータースポーツパークに向かわなければならなくなった。チームは今夜にも州境を越え、中継地で夜を明かしてから明日の日中にもサーキットでの設営を始めることになる」

「これは、すべてのスポンサーとパートナーのために、レースを続けるべく必要だった措置だ。我々のするべきことではあるものの、重要な点はすべてのメンバーが安全で健康であることだ」

「もちろん、チームとしても難しい決断になった。私としてもクルー、ドライバー、そして彼らの家族のことをつねに頭に思い描いていた。これは1カ月以上に及ぶ可能性のある長旅を全員に強いる準備となる、大いなるスクランブルだったよ」

 このTeam18を始め、今季からフォード陣営に加わったケリー・レーシングやTickford Racing、Walkinshaw Andretti United、Erebus Motorsportなどがすでにニューサウスウェールズ州のシドニーへ向けて移動を開始している。

2014年王者マーク・ウインターボトムとスコット・パイ(左)の実力者2名を走らせるチャーリー・シュワルコート代表(右)

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