住宅ローンを借りるとき保証人は必要?変更はできる?

原則として、住宅ローンの借り入れに連帯保証人は不要です。ただ、夫婦でペアローンを組んだり、収入を合算してローン審査を受けたりする際には、金融機関側が連帯保証人を求める可能性があります。今回は、住宅ローンを借りるときに必要な「保証人」の基礎知識と、連帯保証人から外れるための方法をご紹介します。

住宅ローンの借り入れに連帯保証人は一般的には不要

住宅ローンを借り入れる際、連帯保証人は原則不要です。購入予定の物件自体が担保となり、金融機関側が貸倒損失のリスクを回避できるためです。以前は連帯保証人を求める金融機関も多かったものの、人によっては保証人が立てられず、住宅を購入できないケースが見られました。結果、保証人ではなく「保証会社」を利用する形態が一般的となった経緯があります。

保証会社とは、住宅ローンなどの信用保証業務を行う事業者のことです。いわば保証人の代行業者であり、ローン契約者(以下、債務者)は保証会社に保証料を支払います。万が一、債務者が支払いを滞納した場合は、保証会社が金融機関に「代位弁済」を行います。

連帯保証人を立てる必要がない分、以前に比べて住宅を購入しやすくなったのは確かです。計画通り支払えば問題ありませんが、保証会社を利用するリスクはしっかりと覚えておきましょう。

連帯保証人、保証人、連帯債務者の違い

住宅ローンの借り入れに連帯保証人は不要ですが、一部例外があります。例えば、家族と収入を合算し、住宅ローンの審査を受ける場合です。それぞれが連帯保証人、または「連帯債務者」になる必要があります。今一度、連帯保証人と保証人、連帯債務者の違いをおさらいしましょう

■連帯保証人とは

連帯保証人とは、住宅ローンの債務者が債務不履行に陥った場合、履行責任を負う権利者のことです。通常、連帯保証契約は債務者と債権者(金融機関など)との間で締結します。債務者が住宅ローンの支払いを滞納した際、連帯保証人が返済に応じる形となります。また、連帯保証人になるには、金融機関による審査をクリアしなければなりません。金融機関側が返済能力を判断し、問題がなければ連帯保証人として認められます。

■保証人とは

保証人とは、連帯保証人と同じく履行責任を負う権利者のことです。債務者が債務不履行に陥った際、保証人がその返済を肩代わりしなければなりません。ただ、連帯保証人と保証人には、履行責任の重さに違いがあります。

連帯保証人の場合、債権者の請求を拒否する権利がありません。たとえ債務者に返済能力があり、意図的に請求を拒否した場合においても、必ず連帯保証人に請求がきます。また、一括返済が基本のため、分割払いが適用されません。本来返済すべき金額を超えることはありませんが、債務者同様の履行責任を課せられるのが連帯保証人の役目です。

一方の保証人は、連帯保証人ほどの履行責任がありません。例えば、債務者を超えて保証人に請求がきた場合、「催告の抗弁」により返済を拒否できます。保証人は債権者に対し、「まずは債務者に請求してください」と主張できるため、必ずしも返済に応じる必要はありません。

また債務者に資力が残っており、意図的に請求を拒否した場合も同様です。保証人は「検索の抗弁」により、債務者の所有財産に強制執行をかけるよう主張できます。「まずは財産を差し押さえてください」と主張できるのは、保証人ならではの特徴です。

このことから、住宅ローンの借り入れには連帯保証人を立てるのが一般的です。原則不要なものの、後述するペアローンを組んだり、親名義の土地に建物を建てたりする場合は、連帯保証人が必要となります。

■連帯債務者とは

連帯債務者とは、同一の債権(住宅ローン)を一緒に返済する権利者を指します。連帯保証人との違いは以下の例の通りです。

・連帯保証人:ローン契約者(夫)+連帯保証人(妻)
・連帯債務者:ローン契約者(夫と妻)+連帯保証人(いない)

連帯保証人の場合、あくまでも債務者は夫一人です。これを「単独債務」といいます。一方の連帯債務者は、夫と妻が連帯して履行責任を負うため、一方が完済すれば、もう一方も完済扱いとなります。また、債権者は連帯債務者に対し、さまざまな形態での請求が可能です。例えば、夫に全額返済を請求できたり、夫婦それぞれ同じ、もしくは異なる割合で請求できたりします。

連帯保証人との違いは、住宅ローン控除を受けられることです。住宅ローン控除とは、住宅ローンの契約者で一定要件を満たす場合、ローン残高(年末残高)をもとに所得控除が受けられる制度を指します。連帯保証人は金融機関からの請求に応じても、住宅ローン控除の対象にはなりません。一方の連帯債務者は対象となるため、所得税または住民税が控除されます。

「連帯保証人」を求められるケース

金融機関や審査状況にもよりますが、連帯保証人を求められるケースは以下の通りです。

■契約者の収入が少なく、勤続年数が短い場合

契約者の収入および勤続年数が短く、単独名義では住宅ローンを組めないケースです。この場合、妻や子どもと収入を合算して審査を受けます。同じく単独名義では、返済比率を満たさない場合も連帯保証人が必要です。

■共有名義で住宅ローンを組む場合

複数人で住宅ローンを組む際、互いが連帯保証人になるのが一般的です。ただ、名義のみ共有する場合は、その限りではありません。

■ペアローンを組む場合

夫婦や親子でペアローンを組む場合、互いが独立した住宅ローンを組みます。

■1本のローンを複数人で組む場合

夫婦や親子で収入を合算し、1本のローンを組む場合も連帯債務者が必要です。収入合算者が連帯債務者となります。

■親名義の土地に住宅を建てる場合

親名義の土地に住宅を建てる場合、親が担保提供者として連帯保証人になります。ただ、親に返済義務は発生しません。

「連帯債務者」が必要なケース

現状、連帯債務方式での借り入れは、フラット35や一部の金融機関が扱うローン商品が該当します。実際に連帯債務者が求められるケースをみていきましょう。

■フラット35を利用する場合

フラット35とは、「住宅金融支援機構」と金融機関が提携して販売する長期固定金利の住宅ローンです。連帯債務を利用できる代表的なローン商品で、一定の要件を満たす住宅であれば、金利がさらに引き下がる「フラット35S」も利用できます。

ローン契約者の返済能力が審査基準に満たない場合は、連帯債務者を求められる可能性があります。フラット35は、連帯保証人はもちろん、保証会社も不要な住宅ローンのためです。その分だけ契約者個人の返済能力が重視されるため、審査が通過しづらい状況においては、連帯債務者を立てるのが一般的です。

なお、夫婦で連帯債務型のフラット35を利用すると、団体信用生命保険加入時において「夫婦連生団信(デュエット制度)」を選べるメリットがあります。保険料が通常の1.5倍ほど安くなるため、夫婦で利用する場合はおトクになります。

■親子リレーローンを利用する場合

親子リレーローンとは、親子で住宅ローンを組み、2世代でローンを返済する制度のことです。親子で収入を合算でき、後継者(子)の年齢をもとに借入期間を選べる特徴があります。主にフラット35など、返済期間が長期化する住宅ローンで利用します。

親子リレーローンは、後継者に一定の条件が課せられます。「フラット35 親子リレー返済」の場合は、以下の条件が設けられています。

1.申請時の年齢が満70際の人
2.主債務者が直系卑属(子・子孫)かつ定期収入がある人
3.連帯債務者になれる人

ちなみに上記の例は親が主債務者、子が連帯債務者としてローンを返済する形を想定しています。同系統の返済プランに親子ペアローンがありますが、こちらでは親と子が個別にローンを組み、返済していきます。2本のローンを同時に返済する形であるため、親から子にバトンタッチする親子リレーローンとは、明確な違いがあります。

なお、親子リレーローンには返済期間の長期化、借り入れ可能額の拡張といったメリットがある反面、どちらか一方の収入が減少すると、返済負担が重くなるデメリットもあります。

保証人は誰を選ぶべきか

一部例外を除いて住宅ローンに保証人は不要です。もし、金融機関から連帯債務者を求められた際には、親・兄弟などの親族や夫・妻などの配偶者、あるいは成人した子どもを立てるのが一般的です。また、借り入れはしなくても、共有名義の土地・住宅の場合は、名義人が連帯保証人になることを求められる可能性があります。

相手さえ承認すれば、友人を保証人に立てることも可能です。ただ、過去には“保証人トラブル”から、友人間の訴訟問題に発展した事例もあります。万が一の事態を考慮すると、連帯保証人は身内に依頼するほうが良いでしょう。

住宅ローンを返済できなくなったら連帯保証人にどんな影響がある?

住宅ローンの支払いが困難な場合、自己破産を検討する方が多いかもしれません。しかし、主債務者の自己破産は、連帯保証人を破綻に追いやるほどの影響を及ぼすことがあります。

債務者が自己破産したときの連帯保証人への影響

債務者が自己破産した場合、金融機関などの債権者は連帯保証人に返済を一括請求します。問題なのは、自己破産した債権者の返済義務は「免除」され、連帯保証人の義務は「免除されない」ことです。

一括請求を受けた連帯保証人は、資力があればローン残高を返済し、なければ財産が差し押さえられます。保証人の自宅は競売にかけられ、その売却費でローン残高を支払います。それでも返済が難しい場合は、連帯保証人も自己破産を余儀なくされるでしょう。

ただ、最終的に自己破産する債務者はそれほど多くありません。金融機関側も債務者の自己破産は望んでおらず、支払いが難しければ、無理のない範囲で返済できるよう調整してくれます。たとえ破産手続きが進行中でも、自宅の任意売却は可能です。満額は難しいかもしれませんが、連帯保証人の返済負担を軽減できるでしょう。いずれにせよ、住宅ローンの債権者は、連帯保証人に影響がでないよう最大限配慮しなければなりません。

保証会社の場合は「代位弁済」になる

連帯保証人ではなく、保証会社を利用している場合は代位弁済となります。代位弁済には、債権者側が不利になるさまざまなリスクをはらんでいます。

「代位弁済のリスク」

・一括返済を求められる(原則、分割には応じない)
・損害遅延金が発生する
・信用情報に傷がつく
・財産の差し押さえが行われる

まず、債権者が住宅ローンを滞納すると、保証会社は金融機関に代位弁済を行います。保証会社は債権者に対し、肩代わりした費用と損害遅延金を請求。後ほど自宅に「代位弁済通知」が届きます。

代位弁済通知を受けたまま放置すると、保証会社が財産を差し押さえたり、自宅を競売にかけたりします。こういったことが許されるのは、代位弁済のタイミングで金融機関から保証会社に債権譲渡が行われるためです。保証会社は債権の回収権利を得て抵当権を実行するに過ぎないため、法的に問題はありません。

上記からわかる通り、代位弁済は大きなリスクを伴います。住宅ローンの借り入れに保証会社を利用する場合は、代位弁済の危うさをしっかりと把握しておきましょう。

離婚をして連帯保証人を外れるのは難しい

妻が連帯保証人となり、住宅ローンを組むケースは少なくありません。一方で、住宅ローンの支払いが困難になると、「離婚するので連帯保証人から外れたい」という声も聞かれます。法的には可能なものの、実際は非常に難しいといわれています。離婚して法律上は他人同士になったとしても、連帯保証人(妻)の履行責任は免除されないためです。

離婚の際に、「離婚後は連帯保証人から外れる」といった内容の公正証書を作成しても変わりません。一度連帯保証人になると、そう簡単に外れることはできないのが現状です。

ただ、方法はゼロではありません。離婚する妻の変わりに新しい連帯保証人を立てた場合、金融機関との交渉によっては、連帯保証人から外れられる可能性があります。また住宅ローン以上の資産を担保に連帯保証人から外れる方法もあります。

もうひとつの方法として、住宅ローンの借り換えが挙げられます。詳しくは後述しますが、住宅ローンの借り換えが成立すると、元の金融機関に全額返済が行われるため、必然的に連帯保証人から外れられます。いずれも“保証人トラブル”の元となりやすいため、事前に相手と話し合い、今後の方針を定めることが大切です。

離婚が契約違反になることも?

そもそも住宅ローンは、「ローン契約者が住居を所有・購入するために融資するローン」です。以下のような場合、契約違反でローン残高を一括請求される恐れがあります。

(1)ローン契約者が夫:夫が家から出ていく→契約違反
(2)ローン契約者の夫と妻(連帯債務):妻が家から出ていく→契約違反
(3)ローン契約者が夫:妻が家から出ていき、夫は住み続ける→問題なし

(1)と(2)においては、契約当初と状況が変わります。それが契約違反と認められ、金融機関から一括返済を請求される可能性があります。なお(3)に関しては、ローン契約者である夫が住み続けるため契約違反にはなりません。

連帯保証人を変更する方法

残念ながら、連帯保証人の変更は容易ではありません。新たに連帯保証人を立てるにしても、そもそも人が見つからない場合や、債権者の了承が得られない場合もあります。

こちらでは、新しい連帯保証人を立てずに連帯保証人を変更する方法をご紹介します。離婚などを機に連帯保証人から外れたいという方は、ぜひ参考にしてください。

他の金融機関に借り換えをする

現在とは異なる金融機関で住宅ローンを組み直し、連帯保証人を変更する方法があります。原則、住宅ローンの借り入れに連帯保証人は不要のため、新たに保証人を立てる必要がありません。連帯保証人の変更というよりも、「外す」という表現が適切といえるでしょう。ただ、この方法を取ろうと思っても、借り換えローンの審査に通らない可能性がある点に注意が必要です。

住宅ローンで連帯保証人をつけているということは、元の債権者が債務者の返済能力に不安があることを表します。借り換えローンを申し込む金融機関は、その情報を考慮して審査を行います。スムーズに借り換えできるケースは少なく、審査に落ちる可能性の方が高いといえるでしょう。

審査を通すには、少なくとも以下の条件を満たす必要があります。

・主債務者の単独収入が多く、ローン返済の目処が立つ
・新しい金融機関に頭金を多く払う

主債務者の収入が、契約当時(元の住宅ローン)より増えていれば、新たに住宅ローンを組み直せる可能性が高まります。また、借り換えローンを組む金融機関に対し、頭金を多く支払うのも有効でしょう。いかにして金融機関の信頼を得られるかがポイントです。

一括繰り上げ返済をする

ローン残高を一括繰り上げすれば、自ずと連帯保証人から外れます。ただ、単独で行うには難しい方法かもしれません。親や親戚に立て替えてもらうなど、第三者に頼るのが一般的です。実際に立て替えてもらう際は、財産分与などを取りまとめた公正証書を作成します。相手への利益を提示したうえで、交渉することが大切です。

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