『透明人間』見えないものを見せる面白さ

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 『アベンジャーズ』の成功にあやかった、ユニバーサルによる古典モンスター映画のリブート計画は頓挫したが(トム・クルーズ主演『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』は面白かったのに)、仕切り直して製作された本作も悪くない。主人公は透明人間ではなく、彼の被害者。ストーカー行為に及ぶ天才科学者の元カレに果敢に立ち向かうヒロイン像が、いかにも現代的だ。もう一つの大きな改変は、薬を飲んで透明になるのではないことだが、物語の肝に関わる部分なので触れないでおく。

 そもそも1933年のオリジナル版が高く評価されたのは、革新的な特撮技術だけでなく、目に見えない主人公をどう見せるか(あるいは見せないか)という、創意工夫によるところも大きかった。映画は、見えないものを描こうとすると、がぜん面白くなる。本作の魅力もそこに尽きる。

 例えば、『ローズマリーの赤ちゃん』以降ホラー映画では使い古された感のある部屋を覗き見しているかのようなアングルが、透明人間という題材にはとても有効で、その多用が誰かの気配となってサスペンスを持続させる。透明人間を大雨の中に誘い出すというアイデアにもワクワクさせられた(結果的には期待外れに終わるが)。ユマ・サーマンを小太りにしたようなヒロインに、なぜ透明人間がこれほど執着するのか? 個人的には全く理解できないが、モンスター映画好きは見逃せない作品だろう。(外山真也)★★★★☆

監督・脚本:リー・ワネル

出演:エリザベス・モス、オリヴァー・ジャクソン=コーエン

7月10日(金)から全国公開

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