唯一無二のロックンロールバンド!ブランキー・ジェット・シティの解散から20年 2000年 7月8日 ブランキー・ジェット・シティの解散ライブ「Last Dance」が横浜アリーナで開催された日(初日)

ブランキー・ジェット・シティの解散ライブ「LAST DANCE」

2000年7月8~9日、横浜アリーナで開かれたブランキー・ジェット・シティの解散ライブ『LAST DANCE』から今年で20年。時の速さに驚かされるばかりだ。

それはあまりにも突然の発表だった。同年5月10日の朝日新聞――

バンド史上最高傑作『HARLEM JETS』を世に放ち、ブランキー ジェット シティは解散します

そんな文字が並んだ一面告知。けれど、驚きはなかった。「ついにこの日が来てしまったんだな…」と静かに思ったことを覚えている。なぜなら、メンバー3人はいつだってギリギリの崖っぷちに立ちながら、それぞれの魂を揺らし、燃やし、せめぎ合いながら全力で音楽を紡いできたことをずっと見てきたから…。

イカ天を勝ち抜きメジャーデビュー、プロデューサーは土屋昌巳

ブランキー・ジェット・シティは、1987年にバンドを結成。メンバーはギター&ボーカルの浅井健一、ベースの照井利幸、ドラムの中村達也。1990年には『三宅裕司のいかすバンド天国』こと、イカ天に出演。刺青の入った体、話しかけられてもほとんど表情を崩さず口数少ない3人は、ただそこにいるだけで迫力だった。一旦、演奏が始まるとその音楽は鋭いナイフのようにキレッキレで心に突き刺さってくる。そして浅井健一ことベンジーの紡ぐ歌詞は、とても文学的でまるで詩人のようだった。「これは… とんでもないものを観てしまった」と心が震えた。おそらく誰もがあの時そう思ったはずだ。

彼らはイカ天で勝ち抜き、翌年1991年にアルバム『Red Guitar And The Truth』でメジャーデビュー。その後は土屋昌巳がプロデュースを担当し、『Bang!』『C.B.Jim』『幸せの鐘が鳴り響き、僕はただ悲しいふりをする』『Skunk』など… ロックンロール全開な名作を次々にリリースしていった。

すごいを超えてすさまじかったブランキーのライブ

ブランキーといえばライブ。とにかく “すごい” を超えて “すさまじかった”。ダークチェリーのグレッヂのギターをかき鳴らしながら、純粋で、痛いほど美しい歌詞の世界を歌い上げていくベンジー。これがもう言葉を失うほどカッコいい。その隣では、地を這うような低音を響かせながらベースを弾く照井が並ぶ。時にはウッドベースを奏でたり、クールな表情で雄叫びを上げる照井の眼光の鋭さには凄みがあった。そして二人の後ろでは、まるで夜叉か鬼かというような形相で、狂ったようにドラムを叩き続ける中村達也。そんな3人のすさまじいパワーはいつも何かと闘っているようにも見えた。

どんどん高まっていくエネルギー。客席の私たちは「一体どこまで連れていかれるんだろう?」と、どんどん彼らの音楽に引き込まれていく。戻ってこれなくなるかも… というちょっとした恐怖すら沸いてきたりする。それでも、「もうなんでもいいや。どこまでだって、行けるところまでついて行ってやる」と肚をくくる。そうして音楽に身も心も委ねると、心の底から彼らの音楽が楽しくて仕方なくなって、気づくと笑顔になっている。これはもう “快楽”。音楽の高みの世界へと連れて行ってくれる… これこそがブランキー・ジェット・シティのライブだった。

解散から20年、色あせることなく愛され続けている音楽

ブランキーの解散から今年で20年が経ち、若い世代からも憧れをもって見られ、伝説のバンドとして語られるむきもある。けれど私は個人的に「あの伝説の~」と呼ばれるのは、ブランキーには似合わないような気がする。周囲を燃やしつくすほどのエネルギーで、私達の心に音楽の素晴らしさやかっこよさ、高みを見せてくれた唯一無二のバンドを、伝説になんてしたくない。なぜなら今でもこんなにも活き活きと心に生き続けているのだから。

2000年のラストライブでベンジーは言った。「いつまでもいつまでも覚えといてね、俺たちのこと」。その言葉通り、あれから20年が経とうとも、彼らが残した音楽は色あせることなく愛され続けている。

沸点すら分からないエネルギー、限界点なんて無い!

後にベンジーに何度か取材させてもらう機会をいただいた。大好きなベンジーを前にド緊張する私に優しく接してくれるとても素敵な人だった。ベンジーにインタビューをさせてもらうたび、音楽に対する真っすぐな姿にいつも心が熱くなる。

きっと、ベンジーはじめブランキー・ジェット・シティの3人は、いつだって心から純粋に音楽に向き合い、心から音楽を愛した。だからこそ、そこには限界点すら存在せず、沸点すら分からないほどのエネルギーが生まれ、私たちを見たことのない素晴らしい音楽の世界へ連れて行ってくれたのだと思う。そして私は今もあの頃のまま、ジェット・シテイの住人として、いつまでも楽しく踊り続けている。

カタリベ: 村上あやの

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