あした天気に

 「特別」の2文字は午前中のうちに外れてくれたが、大雨警報は継続したまま。少し空が明るくなったか、ああ、また降りだした-と窓の外を眺めてばかりだ。雨がやまない▲河川の氾濫や崖崩れ、建物の浸水被害などの情報が県内でも増え続けている。昨日の紙面、泥水に沈んだ国道を漂流する車の写真に言葉を失いつつ、車を捨てる、と、とっさに決めたドライバーの機転には拍手を送りたいと感じた。命が最優先、ほかの心配は後回しでいい▲昨年大ヒットしたアニメ映画「天気の子」は、祈るだけで空を「晴れ」にできる不思議な能力を持つ少女が主人公の物語だ。新海誠監督がインタビューで創作の背景をこんなふうに語っていた▲〈…四季の移ろいを情緒的で美しいものととらえ、僕自身もそれを映画で描いてきた。だが、猛暑、寒波、大雨など気候変動が起きて、天気が攻撃的になってきた感覚がある〉…。攻撃的-が言い得て妙だ▲毎年どこかで「数十年に1度の雨」が降る。この形容は遠からず修正されるべきだ、と聞くたびに思うのだが、無益な感想はともかく、自然が繰り返し牙をむく。特殊能力のない私たちは天気に勝てない▲「あした天気にしておくれ」-素朴で悲痛な日本中の願いを思う。また雨脚が強まってきた。不安な日々が続く。(智)

 


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