土砂に埋没…「田畑」今年は再起不能 大村市、記録的大雨に恐怖と落胆

佐奈河内川の氾濫で護岸が決壊し、石と土砂に覆われた田んぼ=7日午前11時53分、大村市今富町

 6日から7日にかけて記録的大雨に見舞われた大村市では、北部の福重地区を流れる佐奈河内川と郡川との合流点付近で護岸が決壊。川が氾濫し、周辺の田畑の大半が石と土砂で覆われた。農作物とともに農業の基盤まで失い、「深い爪痕」を残した。住民は「仕事を続けていたら命はなかった」「今年はもう再起不能」と恐怖と落胆の声を漏らした。
 観葉植物の栽培・販売を手掛けるエコグリーンヒガシ(今富町)では、約十数万鉢の植物のほとんどが一晩で流された。ビニールハウスの骨組みは水圧で曲がり、辺りにはビニールや土砂が散乱していた。

倒壊した観葉植物のビニールハウス=7日午後1時13分、大村市今富町のエコグリーンヒガシ

 東勇一郎代表(36)によると、約20棟のハウスには6日夕方から濁流が押し寄せた。「そのまま仕事を続けていたら命はなかった」と振り返る。約100種類の苗を失い、損害は計り知れない。「手間暇掛けて育てたものが流れてしまった。今からどうしたらよいか…」と言葉を失った。
 先祖代々、稲作をしている今富町の農家、山本英美さん(60)は先月下旬に田植えを済ませたばかり。「今年はもう再起不能。来年の田植えにも間に合うかどうか」と肩を落とした。
 このほか、市内では6日午後から崖崩れや浸水被害が相次いだ。
 大村署などによると、市内で崖崩れの情報は十数カ所寄せられたが、7日夕までに現認できていない場所もある。水計町の工場では6日午後3時ごろ、プレハブ2棟を巻き込み敷地が崩壊。雄ケ原町の第2大村ハイテクパークでも、最大で幅18メートルにわたって敷地の表層が崩れた。南川内地区でも崖崩れで道路が寸断され、一時孤立状態になったという。
 市によると、床上・床下浸水などの情報は8件寄せられているが全体の把握はできていない。上諏訪町のマックスバリュ大村諏訪店では、床が10センチほど浸水。同社広報によると6日午後3時40分に閉店し、泥の除去や消毒などが済み次第、営業を再開する。
 市内28カ所の避難所には7日午後6時半現在で96人が避難。市立全小中学校は8日も休校とする。園田裕史市長は「今後はがれき撤去などの復旧作業や被害状況の詳細な把握に努めたい」と話した。

 


© 株式会社長崎新聞社