ラリーXノルディック:初日は“世界王者勢”を下したラーソン先勝も、日曜はクリストファーソンが逆襲

 7月2~5日にスウェーデンのホーリエスで開催され、欧州での本格的ラリークロス競技再開となったRallyX Nordic開幕戦『All-Star Magic Weekend』は、WorldRX世界ラリー選手権参戦組らが多数エントリーし、前哨戦となった木曜ラウンド1をロビン・ラーソン(アウディS1 RXスーパーカー/KYB Team JC)が制覇。そして日曜のラウンド2は、WorldRX連覇の元世界王者ヨハン・クリストファーソンが、約20カ月ぶりのRXドライブで貫禄の勝利を飾っている。

 その他のモータースポーツ・カテゴリーと同様、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延の影響を受けて開幕延期の措置を採ってきたRallyX Nordicは、待望の開幕戦を大規模なライブストリーミングを柱とした『All-Star Magic Weekend』として開催することを決定。

 レジェンド、スーパーカー、スーパーカーライト、クロスカー/クロスカート、クロスカージュニアの5クラスには、2度のWRC世界ラリー選手権王者マーカス・グロンホルムを筆頭に、WRCの現役フロントランナーであるティエリー・ヌービル、現WorldRX王者ティミー・ハンセン(ともにクロスカー/クロスカート部門に参戦)、2018年RallyX Nordic王者のオリバー・ソルベルグ(シトロエンDS3 RXスーパーカー/PS 110 procent AB)など、豪華ドライバーの参戦が実現した。

 そのオリバーをして「世界選手権レベル」のグリッドとなった20台参戦のスーパーカー・クラスは、セッションごとにトップタイムが入れ替わるハイレベルな攻防戦に。プラクティスからここをホームとするWorldRXレギュラーのラーソンがスピードを披露し、予選ヒートでも好調を維持すると順当にセミファイナル1も制覇した。

 一方、ジョーカーラップでの走行を「まるでお婆ちゃんのようなドライブ」と自省したWRCレジェンドの子息ニクラス・グロンホルム(ヒュンダイi20 WRXスーパーカー/GRX Taneco)は、そのラップでジョーカー最速を記録し予選ヒート3つで最速となり、ファイナルでのポールポジションも確保してみせた。

 するとその決勝スタートで飛び出したのはポールシッターを出し抜いたラーソンの方で、そのままチェッカーまで一度もトップランを譲ることなく初日前哨戦を完勝。2位には予選ヒートで久々のフォルクスワーゲン・ポロRXスーパーカーに手を焼き、荒々しいドライブを見せていたクリストファーソン(VW Dealer Team Bauhaus)が、早い段階でジョーカーを消化しポジションアップ。

 3位にグロンホルム、4位にはプラクティスからドライブシャフトとギアボックスの破損に悩まされてきたオリバー・ソルベルグが入った。

マーカス&ニクラスのグロンホルム親子(右)に、ヨハン・クリストファーソン(左奥)、オリバー・ソルベルグ(左手前)など豪華ゲストが集結した
前哨戦のR1から、ニクラス・グロンホルム(ヒュンダイi20 WRXスーパーカー/GRX Taneco)とロビン・ラーソン(アウディS1 RXスーパーカー/KYB Team JC)が首位攻防戦を展開する
2017年のRallyX Nordic王者でもあるトーマス・ブリンテソンは、Q2のバトル中に激しくコースオフ
久々にドライブする2016年製VWポロに手を焼いたヨハン・クリストファーソンだったが、それでもR1でファイナル進出、2位入賞をもぎ取る

■クリストファーソンが20カ月ぶりのラリークロス優勝

「これは新車にとって本当に良いスタートになった。僕のアウディは1日中完璧に機能してくれたしね」と、今季からWorldRXでKYB Team JCに加入した勝者ラーソン。

「ファイナルでは素晴らしいスタートが決まった。グロンホルムが速いのはセミファイナルで分かっていたし、オープニングラップはテンポを重視し、スリッパリーなグラベルで慎重に慎重を期したよ。今日は何の問題もなく楽しい1日だった。今週末が楽しみだね」

 そう語ったラーソンの言葉どおり土日のラウンド2も熾烈な展開となり、土曜ふたつの予選ヒートでは、ラーソンとグロンホルムが引き続きのペースセッターに。

 しかし悪天候と化した日曜のQ4で異次元のドライビングを見せたのはクリストファーソンで、リビルトされた2016年式フォルクスワーゲン・ポロは盤石の戦闘力とは言い難い状況だったにも関わらず、セミファイナルではライバルを10秒近く突き放してみせる。

 これでファイナルに向けラーソンと並んでの最前列を確保したクリストファーソンは、スタート直後のターン1でアウディをねじ伏せると、そのままラーソン、ソルベルグ、オリバー・エリクソン(フォード・フィエスタRXスーパーカー/Olsbergs MSE)らを従えて、WorldRX連覇の実力を示す約20カ月ぶりのラリークロス復帰勝利を手にした。

「こうしてカムバックできて本当にうれいしよ。勝利の匂いが漂ってきたとき、僕は純粋に自分のペースの極限まで攻めていると感じられた。こんな”スーパー・コンペティティブ”な状況ですべてを分析し、後方にギャップを感じながら雨の中であらゆるラインを試してみるのは最高に楽しかった」と、喜びを語ったクリストファーソン。

「決勝でのスタートも良かったね。今日は悪天候で3回のスタート全部が決まった。実際、ポロはウエットでのラウンチが簡単で、クラッチとスロットルでのコントロールが容易なんだ。そこからは後ろのマシンにスプレーをして何も見えないようにし1周目はプッシュ、その後は安全マージンを見てラップを重ねたよ」

 一方、注目を集めた招待クラスのレジェンド部門は、ニクラスの父マーカス・グロンホルムがWRC現役時代から何ら衰えを感じさせないシャープなドライビングを披露。ペターの兄で、オリバーの叔父でもあるWRC時代の仲間ヘニング・ソルベルグや、Olsbergs MSE代表のアンドレアス・エリクソンを従えて完勝を飾っている。
 
 また、自身が開発にも関与するクロスカー/クロスカート専用バギーの『LifeLive Nordic TN5』をドライブしたティエリー・ヌービルと、現WorldRX王者ティミー・ハンセンは両ラウンドともにファイナル進出を逃す結果となっている。

これがRallyX Nordic開幕戦となり、ラーソンやクリストファーソンなどWorldRX勢が選手権でも上位を独占する結果に
「実はこのマシンは、今回が初めてのドライブだった」と明かしたヨハン・クリストファーソンだが「まったく問題なく機能したし、結果には満足している」
初日からトラブルに苦しんだオリバー・ソルベルグだが、元シリーズ王者の貫禄を見せ連日のファイナリストとなった
現役WorldRXマシンで圧巻の走りを披露したマーカス・グロンホルム(左)と、WRC時代をともに戦ったヘニング・ソルベルグがレジェンド部門1-2となった

© 株式会社三栄