九州、中部の記録的豪雨、写真が語る爪痕

豪雨の影響で球磨川が氾濫し、水に漬かった熊本県人吉市の市街地=7月4日午前11時48分(共同通信社ヘリから)

 停滞する梅雨前線の影響で、日本列島は先週末から九州を中心に記録的な大雨に見舞われた。川は次々氾濫、土砂崩れで道路や家屋が流されるなど人々の生活基盤は大きく破壊された。熊本県では浸水した特別養護老人ホームの入所者らが死亡するなど、犠牲者は各地で60人を超えた。豪雨の爪痕を写真で追った。(47NEWS編集部)

大雨で陥没した道路。右は球磨川=7月4日午後5時37分、熊本県球磨村

 熊本県と鹿児島県(奄美を除く)に大雨特別警報が発表されたのは4日。熊本県湯前町では24時間降水量が489・5ミリに達し、鹿児島県伊佐市でも310ミリを記録した。

特別養護老人ホーム「千寿園」で、犠牲者を乗せたとみられる車両に手を合わせる女性ら=7月5日午前11時30分、熊本県球磨村

 熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」では14人が犠牲に。施設関係者は当時の状況を振り返り「かなり早く水かさが増える状況で、避難は難しかった」と話した。

土砂崩れで通れなくなった道路を見つめる女性=7月4日午後3時13分、熊本県芦北町

 土砂崩れも相次いだ。道路が寸断されて集落は孤立、住宅が押しつぶされた。

熊本県球磨村で続けられる救助活動=7月5日午前10時13分

 被災地では警察や消防、自衛隊が行方不明者の捜索や住民らの救助に当たった。

水に漬かったJR佐賀駅近くの道路。=7月6日午後5時41分

 雨雲が連なり局地的な豪雨をもたらす線状降水帯が形成された6日、被害はさらに広がった。福岡と佐賀、長崎の3県に特別警報が出た。福岡では添田町を流れる川が氾濫し、久留米市などでは道路や水田が冠水。佐賀や長崎でも土砂崩れや崖崩れが起きた。

豪雨の被害を受けた大分県日田市の天ケ瀬温泉で横倒しになった木や車=7月8日午前8時46分

 大雨は7日も続き、大分県日田市の天ケ瀬温泉では、旅館に土砂が流れ込んだ。従業員は片付けに追われた。

車中泊する夫婦=7月7日午後7時53分、熊本県球磨村

 「昼間に家や飼い犬の様子を見にいくため、避難所よりも近いここに泊まることにした」。7日夜、熊本県球磨村総合運動公園の駐車場には、高齢の夫婦の姿があった。裏山が土砂崩れを起こす危険があるとして車中泊を決めた。

岐阜県下呂市の飛騨川近くに住む男性=7月8日午後0時21分

 九州に次いで8日は長野、岐阜両県にも特別警報が出た。岐阜県下呂市の飛騨川近くに住む男性は、午前3時に避難指示が出て公民館へ避難。明るくなってから自宅に戻ると1階が水浸しになっていた。「何から手を付けていいのか」。男性は肩を落とした。

住民が土砂崩れに巻き込まれ行方不明になっている現場にあった泥にまみれた靴=7月9日午後1時30分、熊本県津奈木町

 国土交通省は10日、豪雨による河川氾濫で、全国で少なくとも約1286ヘクタールが浸水したと発表。うち1060ヘクタールは熊本県の球磨川流域だった。土砂災害は午後4時時点で25県の計251件確認された。政府はこの日、今回の豪雨を激甚災害に指定することを決めた。

熊本県津奈木町の土砂崩れ現場で行方不明者の捜索に向かう警察官=7月10日午前9時14分

 いまだ10人以上と連絡が取れていない。不安定な天候が続く中、被災地では懸命な捜索活動が続いている。

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