松下信治開幕戦インタビュー:最後列スタートから挽回、連続入賞に「いいレースができたと思います」

 今季は念願のタイトル獲得を目標に掲げる松下信治(MPモータースポーツ)。しかし開幕戦の予選では、DRSがまったく作動しないこともあり、アタック中にコースを飛び出すなどしてまさかの21番手に終わる。

 それでもレース1では9位まで順位を上げ、レース2も6位入賞と、連続ポイント獲得を果たした。緒戦を終えてどんな手応えを感じているのか、語ってもらった。

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──開幕戦は、2レースとも入賞を果たしました。

松下信治(以下、松下):はい。いろいろありましたけどね。レース2はスタートはうまくいって前の2台を抜きかけたのですが、行き場所を失って下がるしかなく、順位は上げられませんでした。

 ただ去年までとスタートのやり方を変えて、それがすごくうまくいっているんですね。なのでさらに極めていけば、スタートで毎回順位を上げることも夢ではないと思います。

 その後は後ろから迫ってくるミック(シューマッハー/プレマ・レーシング)がめちゃくちゃ速くて、ずっとバトルしてる間に前とのギャップもすっかり開いてしまった。必死にブロックして何とか抜かれずに済みましたけど、厳しかったですね。タイヤをセーブしたとかそういうことではなく、単純にプレマに比べて遅かったです。

──前のクルマから離されると、DRSも使えないですよね。

松下:そう。ミックはがんがんDRSを開けて、迫って来ていましたしね。

──プレマに限らず、上位チームのクルマとはやはりパフォーマンス差がありますか?

松下:必ずしも、そうは思っていません。というかすでに答えはけっこう見えていて、実はレース2ではチームメイトの(フェリペ)ドゥルゴビッチとも話し合って、テストのつもりでいろんなことを試しながら走ることにしたんです。僕は特に、予選は最後尾でしたしね。スロットルマップとかを試して、いいデータが採れた。その辺りをうまく使えば、今後はARTとも勝負できると思います。

──第2戦はタイヤが一気にソフトになります。

松下:そうなんですよ。なので今回のデータをあまり鵜呑みにしない方がいいと思います。あとは予選ですね。とにかくミスせず、着実に上位グリッドを獲得していきます。

──予選やレース1で悩まされたDRSトラブルは、もう大丈夫そうですか?

松下:おそらく(苦笑)。レース1後にチームが怒って主催者側に抗議して、その後しっかり調査して、一応原因はわかったようです。他にも電気系トラブルがいろいろ出ていますしね。なので水曜日に特別に、電気系統を確認するためだけのテスト走行をするようですよ。

──いくら何でも、トラブルが出過ぎだということですね。

松下:そう。ポールシッターのズー(周冠宇/ユニ・ヴィルトゥオーシ)選手なんて、トラブルがなかったらぶっちぎりの楽勝だったでしょう。(マーカス)アームストロングとか、他にもいっぱいトラブルが出てる。電気系は去年とほとんど変わってないのに、謎ですね。

──18インチホイールへの変更で、ブレーキングのフィーリングとか、タイヤマネージメント、マシン全体の挙動など、変わった部分はありますか。

松下:走り方は大きく変わりましたね。ブレーキがとにかく、奥まで我慢できない。そこまで遅らせると、止まらなくなっちゃうんです。ホイールが8kg重くなって、その重い物体が高回転することでいっそう重量の影響が増して、止まりにくくなってるみたいです。今までより20mくらい手前で、ブレーキングを開始するイメージですね。

 それもあって予選ではDRSが壊れた状態で去年までのように目一杯遅らせたブレーキングをしたら止まらずに、飛び出したんですけどね。その後レースで微調整をすることで、レース2ではけっこういい感じで使えるようになりました。

──シューマッハーとのバトルも、まさにブレーキングで差を付けていましたね。

松下:そうですね。レースでやっと、18インチでのブレーキングのさじ加減がわかりました。

──国際映像のコメンテーターにも、褒められてましたよ。

松下:あんな順位でバトルしていたら、褒められている場合じゃないですけどね(笑)。まあ開幕戦で出鼻をくじかれた感じはありましたけど、最初にそういう洗礼を受けていてよかったかなとも思います。チームメイトによると、こういう止まらなさってF3マシンに似てるらしいです。

──第1戦を終えて、今季の手応えは掴めましたか?

松下:そうですねえ。ベテラン勢が相変わらず速いのに加え、F3から来た若手も速い。でもうちのクルマも全然負けていなくて、しっかりバトルできる位置にいると思います。予選がボロボロだったにもかかわらず、そしてレース1はDRSが動かなかったにもかかわらず、ポイントを獲得できた。そしてレース2では、自分の順位を死守できた。いいレースができたと思います。期待したような結果ではなかったですけど、全然ガッカリはしていないですよ。

2020年FIA-F2第1戦オーストリア リモートで取材を受ける松下信治(MPモータースポーツ)

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