再生への旅路

 〈旅をしている者として土地土地、折おりで感じる、しみじみとした思い〉と手元の辞書に説明がある。旅先でじんわりと胸に広がる感懐、それが「旅情」というものだろう▲旅行をするならどうぞ地元で-と、行政が県民を対象に、宿泊費の助成を打ち出したところ、予想以上の利用や予約が集まったという。コロナ禍にあえぐ県内の観光業を支援しようという呼び掛けに、多くの県民が応えた▲いい機会だ、長崎県の良さをあらためて見詰めよう。県内の観光業を私たち県民が支えよう。こうした思いもまた、しみじみと胸に広がる「旅情」と呼びたい▲九州経済調査協会によれば、ホテル、旅館など宿泊施設の6月の稼働状況を示す指数が、本県では4月、5月から大きく改善した、と先ごろの紙面にある。観光需要を呼び起こす策を、早めに打った効果とみられる▲経済記事に限らず、ここしばらくは「悪化」「マイナス」の文字ばかりを紙面で目にしてきた。だからだろう、「改善」の見出しが心なしか浮き上がって見える▲社会全体から見れば、この改善も小さく、わずかな前進といったところか。やるせないことに、他県では再出発の矢先だった観光地が豪雨にやられた。経済の立て直し、観光再生という旅路はまだまだ長く、予想を超えてきっと険しい。(徹)

 


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