「取るべき態度ではない」中日捕手・マルティネスに専門家が指摘した行為とは?

中日のアリエル・マルティネス【写真:荒川祐史】

サインに首振られ不満顔…「気持ちのいい態度ではない」

中日のアリエル・マルティネス捕手が8日に本拠地・ナゴヤドームで行われたヤクルト戦に「6番・捕手」で2度目の先発出場した。キューバ出身で今月1日に育成選手から支配下登録選手に昇格したばかり。5日の巨人戦で1991年のロッテのマイク・ディアズ以来、29年ぶりに外国人捕手としてスタメンに名を連ねた話題の男の可能性を、中日、西武、ロッテで外野手として活躍した平野謙氏が解説した。

“女房役”のA・マルティネスにとっては、試練の展開となった。3点を先行して迎えた2回、先発の山本が3安打2四球で追い付かれ、再び2点リードした4回にも、山本と2番手のドラフト2位ルーキー左腕の橋本が2安打2四球で同点とされた。マルティネスは配球に迷ったのか、4回にはたびたび自軍ベンチをのぞき込み、さらに自分が出したサインに対して投手が首を振ると、あからさまに首をひねり不満そうな態度を取るシーンがあった。

平野氏は「ピッチャーがサインに首を振ったことに納得がいかなかったのか、ベンチの采配に対してなのかはわからないですが、いずれにせよ、投手にとっても他の味方野手にとっても、気持ちのいいものではない。チームが1つにまとまるために、取るべき態度ではないでしょう」と指摘した。

また、3回無死一塁で、一塁走者・山田に二盗を許した際、送球が高くそれて遊撃・京田が辛くもジャンプしてキャッチした。平野氏は「投手が完全にモーションを盗まれていて、いい送球をしても間に合わないタイミングでした。今後、経験を積んでいく中で、無駄にリスクのあるプレーをしない状況判断を磨いていくことも大事でしょう」と話した。

評価できるポイントはキャッチング

一方で、「外国人捕手は腰高で、低めに構える場合に片膝をつく選手が多いが、マルティネスは2年間、2軍で経験を積んできただけあって、しっかりかかとを付けた状態で低く構えることができる。落ちるボールがワンバウンドになった時も、しっかり止めていた」と評価。「要は、他にも日本人の捕手がいる中で彼をレギュラーに育てようとするならば、いかに首脳陣が腹を据えて、辛抱強く教育しながら使い続けることができるかどうか。もちろんマルティネス自身にも、忍耐強さが求められます」と語る。2018年3月に育成選手として中日と契約し、今月に支配下登録されたばかりの24歳。まだまだ発展途上である。

ちなみに、1990年と91年にディアズが捕手として出場したとき、平野氏は西武の現役外野手として対戦している。「ディアズも感情がマスクをかぶっているような男で、僕が盗塁を決めた時や、僕が打ったファウルチップが彼の体を直撃した時には、怒りをあらわにしていました。ただ、投手や味方ベンチに対して不満そうな態度を取ることはなかった。ディアズの場合は、ゲームに集中する中で感情を爆発させていたのであって、集中力を欠くところが見えた今日のマルティネスと違うところです」と振り返った。

打者としてのマルティネスは、非凡さをうかがわせた。1回、2点を先制してなお2死一塁で、外角低め147キロのストレートを逆らわず、右中間フェンス直撃の適時二塁打。9回にはヤクルト6番手の左腕・寺島のカーブを右前に運ぶヒットを放つと、代走を送られてベンチに退いた。今季通算12打数6安打、打率5割をマークしている。平野氏は「広角に打とうとする意識が見えて、可能性を感じます。今後、相手に研究され内角を攻められたときに、体を開かずに打つことができるかどうか。それも実戦を通じて経験を積んでいくしかない」とみる。

29年ぶりに日本球界に現れたスタメン外国人捕手がレギュラーの座を獲得することができるかどうか。簡単ではないだけに、その挑戦の行方が大いに注目される。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2