“新しい鑑賞様式”はこれ 老舗ライブハウス・能勢さん提案

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観客に配布する紙製フェースシールドを紹介しながら、「コロナで傷ついた心を解放するのが音楽やアート。人が集う場を守りたい」と話す能勢さん(左)

 フェースシールドで従来通りのライブを楽しもう―。新型コロナウイルスの影響で休業状態だった老舗ライブハウス、ペパーランド(岡山市北区学南町)を主宰する能勢伊勢雄さん(73)が再開に向け、観客全員のフェースシールド装着を提案している。演奏者からはもちろん、観客同士の発声による飛沫(ひまつ)も防ぐことで、ステージと客席の一体感のあるライブを取り戻すのが狙い。賛同した東京の音楽関係者らが軽量でおしゃれな製品の試作に乗り出しており、広がれば“新しい鑑賞様式”として注目されそうだ。

 1974年開業のペパーランドは、全国的に知られるライブハウスの草分け。毎月20以上のライブを催すが、今年は2月末から出演バンドの自粛によるキャンセルが続く。4月以降、発表の場を求めるバンドにはステージと客席の間にビニール幕を張って開き、無観客のネット配信ライブにもいち早く取り組んできた。

 「だがライブは音を通じての会話であり、観客の熱気とのやりとりで作られるもの。配信ライブは味気なく、何よりアーティストが望んでいることじゃない」

 政府のガイドラインに沿って演奏者がマスクやフェースシールドをつければパフォーマンスの質が低下、ステージとの距離を開ければ一体感が損なわれ、観客同士の距離を保つと会場はスカスカで採算がとれない。ならば、観客一人ひとりが防護してはどうか―。

 5月末、旧知の仲の音楽業界専門サイト「musicman」の畑道纓(みちよ)プロデューサーに提案したところ、イベントグッズなどを企画製作するデザインユニット「We―project」と連携した企画が始動。畑さんの呼びかけで大手印刷会社も加わり、イベントやバンドのグッズ、ファッションアイテムとしても使えるフェースシールドの開発が進んでいる。

 「コロナでついたライブのネガティブなイメージを払拭(ふっしょく)し、音楽やファッションに敏感な人たちが着けたくなるようなものを提供したい」と畑さん。音楽業界だけでなく劇場や映画館、ファッションショーなどでの活用も想定する。

 写真家、美術展企画などジャンルを超えて幅広く活動する能勢さんは「この流れが一つのニュースタンダードになれば」と話し、ペパーランドでは12日のライブ再開から、使い捨て紙製フェースシールドを観客全員に配布する。

 初日のライブは午後7時半から、TILL EWINGら岡山の3バンドが出演する。2千円。感染防止対策として会場の換気と除菌を徹底するほか、入場前の検温や手指の消毒、万一感染者が出た場合に備えて政府が推奨する接触確認アプリ「COCOA」のインストール、氏名と連絡先の記入をしてもらう。問い合わせはペパーランド(086―253―9758)。