金利を探せ!いくら金利が高くても最終的に期待外れに終わるワケ

これだけ先進国では総じて低金利でも、探せば高金利の国はあります。それは前回「定期預金の利率の引き下げ、今どこに高い金利がある?他国の高金利の理由とは」でも説明した通りなのですが、果たして本当に高いリターンが得られるのでしょうか。海外の通貨に投資するには、手持ちの円を海外通貨に換えなければならず、その交換比率である為替レートは常に変動しています。高金利通貨の為替レートはどう動くのか、それによって高金利通貨の金融商品に投資した際のリターンに与える影響はどうなのかを解説してみます。


個人では買えない高金利通貨の外国債券もある

前回、日本や米国など先進国は金利がほぼゼロ水準、もしくはマイナス圏という状況のなか、一部の新興国のなかには金利が2ケタという高金利国もあることを解説しました。

10年物国債の利回りが高い国を改めて紹介しておきましょう。

ウガンダ・・・・・・15.290%
エジプト・・・・・・14.316%
トルコ・・・・・・12.365%
ナイジェリア・・・・・・10.991%

10年物国債の利回りが5月末時点で10%を超えたのは上記4か国でした。この他にアルゼンチンもあるのですが、同国の場合は4年物国債が最も長く、かつ「選択的デフォルト」という特殊な状況にあったため、実は48.880%というとんでもない利回りでしたが、ひとまずここでは取り上げないことにしましょう。

さて、上記のような利回りをみれば、少しでも高い金利が欲しいと考えている人は飛びつきそうなものですが、現実はそう甘くありません。前号でも触れたように、債券は最低の売買ロットが非常に大きいため、証券会社が在庫として抱えているものを小分けにして個人向けに販売するので、在庫がない債券は買いたくても買えないのです。

証券会社としては在庫として抱える以上、その債券を持つことのリスクを背負うことになりますから、信用リスクが高い債券は保有したがりません。上記のように利回りが高い債券は、総じて信用リスクが高いため、一部例外を除けば個人では買えないことになります。

7年で倍になるトルコ・リラ建て債券

ところで一部例外の高利回り外国債券といえば、トルコ・リラ建ての債券が有名です。日本のオンライン証券会社でも扱っているところがいくつかあり、実際に個人の人気も高いと言われています。

直近、個人向けに販売されているトルコ・リラ建ての債券だと、たとえばバークレイズ・バンクPLCが発行しているゼロクーポン債があります。ゼロクーポン債とは「割引債」といって、定期的な利払いが行われない代わりに、利子相当分が債券の額面から割り引かれて購入できるというものです。そして償還まで保有すると、額面価格で元本が戻ってくるため、購入価格との差額分が収益になります。

そのトルコ・リラ建てゼロクーポン債ですが、利回りは年11.52%です。額面価格100に対する購入価格は46.60で、これが約7年後の償還時には100になります。たったの7年で元本が倍になるのです。

しかし、これがもし何のリスクもなく実現したら、この債券には大量の資金が集まる一方、米国や日本のように金利の低い国は全く資金調達できなくなります。

でも、現実の国際金融市場ではそのようなことは起こりません。なぜなら、高金利通貨建ての債券をはじめとする金融商品に投資したとしても、通貨安によってリターンが調整されるからです。

長期間続くトルコ・リラ安

そもそも、なぜ金利が高いのかを考えてみて下さい。金利は物価との見合いで決まります。つまり金利が高い国はインフレ国なのです。

たとえばトルコの消費者物価指数の上昇率は年率で12%にもなります。物価が上昇すれば、相対的にお金の価値は低下します。仮に消費者物価指数が今後も年率12%で上昇した場合、トルコ・リラを現金のままで持っていると、毎年12%ずつお金の価値が目減りしてしまいます。したがって、外国為替市場においてトルコ・リラは、他の低金利国に対して売られ、トルコ・リラ安が進むのです。

実際に為替レートの値動きを見てみましょう。

今から10年前、2010年6月30日時点のトルコ・リラ/円のレートは、1トルコ・リラ=57.350円でした。これが今、いくらなのかというと、2020年6月28日時点で、1トルコ・リラ=15.710円です。この10年間で、トルコ・リラは円に対して72.60%も目減りしたことになります。

トルコ・リラ建ての債券で運用し、トルコ・リラ建てで元本が倍になったとしても、通貨が70%以上も目減りすれば、円ベースのリターンは、「実は宣伝文句ほど大したものではない」ことになります。

為替の投機的な値上がりは一時的

もちろん、為替レートはその時々の需給によって大きく値上がりすることがあります。なんだかよく分からないけれども、ある日突然、外国為替市場に参加している投資家の大部分が、「トルコ・リラに投資したい!!」と思ってトルコ・リラ買いをガンガン進めれば、理論的にはインフレの分だけ安くなるはずの通貨であったとしても、値上がりするケースはあります。

しかし、その動きはあくまでも投機的なものです。そして、投機的に買われた通貨は、たとえ値上がりしたとしても、値上がり益を確保するためにどこかで売らなければなりませんから、それ以上の買い手がいなくなった時点で売りが出始め、最終的には元の水準に戻ります。

結局、長期的に見るとインフレ率の高い国の通貨は、米国や日本のようにインフレ率が極めて低い国の通貨に対して、弱くならざるを得ないのです。したがって、表面的な高金利に誘われて高金利通貨の金融商品に投資しても、最終的に円ベースで得られるリターンは、それを販売しているインターネット証券会社がホームページで紹介しているほどには高くなく、大概は「期待外れ」で終わると考えた方がよいのです。

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