サーブよりレシーブで点数を稼ぐ選手は存在するか|データでみるTリーグ

写真:吉村真晴琉球アスティーダ)/撮影:ラリーズ編集部

卓球の世界では、レシーブ側よりサーブ側が有利だという定説がある。

自分が好きな回転、コース、スピードを持ったボールからラリーを始めることで、その後の展開を有利に進めることができるのが主な理由だと言われている。

事実、2019-2020シーズンのTリーグでは、サーブ時ポイント獲得率の全選手平均は53.0%となっている。トップ選手たちのデータをみても、レシーブ側よりサーブ側のほうが有利という卓球界の定説は当てはまっている。

Tリーガー全選手のデータからも、サーブ側が有利だということに間違いはないようだ。

一方で、選手個人単位でみれば、レシーブ側でも好成績を残していることもあった。レシーブ時ポイント獲得率の全選手平均は47%だが、中には50%を遥かに超える数値を叩き出した選手も存在していた。

そこで今回は、この2つの指標を組み合わせ、「レシーブ時ポイント獲得率がサーブ時ポイント獲得率を上回っている」選手を探してみた。

サーブ側よりもレシーブ側でポイントを稼いでいる選手は存在するのだろうか。

サーブ時ポイント<レシーブ時ポイントの選手は?

Tリーグ2019-2020シーズンのスタッツから、各選手のレシーブ時ポイント獲得率−サーブ時ポイント獲得率を算出、その数値が0以上となったのが以下の選手たちだ。(注:集計対象はリーグ戦シングルスマッチ、VMは集計対象外)

男子

・パナギオティス ジオニス(T.T彩たま)12.5% (サーブ:50.7% レシーブ:63.2%)
・マルコス フレイタス(木下マイスター東京)3.2%(サーブ:58.1% レシーブ:61.3%)
・吉村真晴(琉球アスティーダ)0.7%(サーブ:51.8% レシーブ:52.5%)
吉村和弘岡山リベッツ)0.2%(サーブ:46.2% レシーブ:46.4%)

女子

前田美優日本生命レッドエルフ)6.1%(サーブ:41.8% レシーブ:47.9%)
・サウェータブット スターシニー(日本ペイントマレッツ)2.4% (サーブ:50.1% レシーブ:52.5%)
・山本笙子(TOP名古屋)1.7%(サーブ:42.4% レシーブ:44.1%)

上記の通り、レシーブ時ポイント獲得率がサーブ時ポイント獲得率を上回ったのは、男子4選手・女子3選手となった。だが、出場試合数が少ない選手は集計の母数が少なく、この値が一過性のものである可能性も高い。

写真:吉村真晴(琉球アスティーダ)/撮影:ラリーズ編集部

そこで、リーグ戦シングルスマッチに10試合以上出場した選手にのみ絞ってみると、レシーブ側のほうがポイント獲得率が高い選手は、吉村真晴(14試合出場)とスターシニー(13試合出場)の2名となった。

吉村、スターシニーともにリーグ戦シングルスで勝ち越しているが、サーブ時ポイント獲得率はリーグ平均を下回っている。レシーブ側でのポイントが彼らの勝利のカギとなっていたことは間違いない。

データとイメージは一致しない?

吉村真晴といえば、パワフルな両ハンドドライブと、アップダウンサーブが代名詞だ。中国選手をも惑わすほどのサーブを武器に、国際大会でも長年活躍している。

写真:吉村真晴のアップダウンサーブ/撮影:ラリーズ編集部

その点から、サーブ側を得意にしているというイメージがある方も多いのではないだろうか。ところが、今回の集計ではサーブ時ポイント獲得率は平均を下回っていることが判明した。

Tリーグでの対戦相手は日本人選手が多く、吉村との対戦経験が豊富な選手も数多く存在する。そのため、吉村のアップダウンサーブは相手に研究されていて、国際大会ほどの威力を発揮していないという可能性もある。

一般的に知られているイメージと実際のデータには違いがあるようだ。

スターシニーは前陣速攻型のプレーヤー、時折みせるしゃがみこみサーブのイメージもあるが、データ上はレシーブ側のほうがポイント獲得率が高い。ラリー戦の強さがレシーブ側での安定したポイント獲得率を生み出しているのだろうか。

写真:お辞儀ポーズを見せるスターシニー/撮影:ラリーズ編集部

また、スターシニーはまだ若く、Tリーグ参戦も今期からという点も特徴的だ。

吉村とは逆に、スターシニーは日本人選手との対戦経験がさほど多くない。初めて戦う選手たちを相手にレシーブ側で高いポイント獲得率を残したという点はもっと評価されるべきことかもしれない。

文:石丸眼鏡

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