読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、28歳会社員の男性。セミリタイヤを目標に積極的に資産運用に取り組んでいるそう。投資方針は適切でしょうか? FPの横田健一氏がお答えします。
私は28歳の会社員ですが、お金に縛られず、人生において自由な選択ができるようになること(セミリタイア含む)を目標に、積極的に資産運用に取り組んでいます。具体的には、50歳を目途に年間200〜300万円程度の配当金を得ることを目標にしていますが、目標実現のために下記投資方針が適切か否か、ご意見を頂けますと幸いです。
■投資方針
・長期保有(30~40年)を前提
・毎月約30万円を投資に充当
⇒つみたてNISA枠での投資額(夫婦で約6万5千円)を含む
金額は余力資金の状況により増減させる(月の手取額から生活費を差し引いた金額)
・個別銘柄を運用する力量が無いため、インデックス型のETFを購入
・購入商品は以下の通り(つみたてNISA分以外は全て米ドル建て 購入商品のティッカーと月の購入金額を記載)
米国株ETF(VTI、楽天VTI)12万円
米国除く先進国株ETF(VEA)4万円
新興国株ETF(VWO)8万円
全世界債権ETF(BNDW)4万円
金ETF(GLDM)2万円
・年齢を重ねるにつれて、安全資産(債権等)の割合を増やす
・iDeCoについては、60歳まで資金拘束があることに対して抵抗感を感じるため、加入していない(夫の勤務する会社は確定拠出年金あり)
■補足情報
・夫婦ともに正社員で共働きを継続する。
・将来の働き方や居住地にフレキシビリティを持たせたいため、住宅購入は考えていない
・車の保有、保険の加入も現状考えていない
・子どもは1人だけ欲しい。
・預貯金の一部は祖父母からの贈与によるもの
・状況変化に対して柔軟な対応ができるような体制づくりをしたい
‘【相談者プロフィール】
・男性、28歳、既婚(妻:28歳)
・職業:会社員
・子ども:なし
・住居の形態:賃貸
・毎月の世帯の手取り金額:45万円(夫25万円 妻20万円)
・年間の世帯の手取りボーナス額:150万円(夫130万円 妻20万円)
・毎月の世帯の支出の目安:12万円
【毎月の支出内訳】
・住居費:0円(給与天引き)
・食費:3万円(外食費を除く)
・水道光熱費:1.5万円
・教育費:0円
・保険料:0円
・通信費:1万円
・車両費:0円
・お小遣い:5万円(夫3万 妻2万 外食費を含む)
・その他:1.5万円(消耗品購入、旅行、帰省、家電・家具等買い替え費用を月割りで計算)
【資産状況】
毎月の貯蓄額:33万円(投資30万、貯金3万)
ボーナスからの年間貯蓄額:150万円
現在の貯蓄総額:約2000万円
現在の投資総額:約2000万円(米国株ETF800万、先進国株ETF300万、新興国株ETF500万、全世界債権ETF300万円、金ETF100万円)
現在の負債総額:0円
横田: ご相談頂きましてありがとうございます。株式会社ウェルスペントのファイナンシャル・プランナー、横田健一です。
50歳を目途に年間200〜300万円程度の配当金を得るという目標を達成するための投資方針が適切かどうか、というご相談ですね。お金に縛られず、人生において自由な選択ができるように、という明確なお考えをお持ちで素晴らしいと思います。
では、早速ご説明させて頂きます。
プロから見た相談者の投資方針はどうなのか?
結論から申し上げますと、現在の投資方針で問題ないと思います。むしろ、このペースだと、50歳よりも前に目標水準に到達することができる可能性が高いと思います。
ポートフォリオを拝見すると、米国ETFについてしっかり勉強されており、よく考えられた組み合わせになっているという印象です。基本的に問題ないとは思うのですが、いくつか細かいところを以下、確認させて頂ければと思います。
まず、「200〜300万円程度の配当金」とありますが、配当利回りが同じ場合、200万円なのか、300万円なのかで、保有すべきETFの金額は1.5倍にもなります。例えば、この数字が手取りベースということであれば、税率を20%とすると、税前では250~375万円の配当金ということになります。仮に配当利回りが4%なら、投資残高ベースでは、6250~9375万円とかなり差が開きます。ですので、できれば200万円か、300万円か、1つの目標にされた方が具体的に考えやすいかと思います。
配当金にこだわるならETFの組み換えも視野に
また、「配当金」とありますが、投資残高を取り崩しながら生活していくことは考えられていますでしょうか。お金は生きているうちしか使えませんので、一生を終えるまでに使っていくのがよいと個人的には考えております。
もし取り崩しは前提とせず、文字通り「配当金」のみでこの水準の収入を目指すということであれば、将来的にはETFの組み換えも選択肢になるかもしれません。というのは、投資金額が最も大きいVTIの現在の分配金利回りは2%弱という水準であり、先ほど計算した時に仮定した4%の半分ですので、投資残高ベースではさらに2倍必要になってしまいます。
50歳以降のライフプランを具体的にイメージしておく
一方で、そもそもこの「200~300万円程度」という水準は、50歳以降の生活を送るにあたり、十分でしょうか。現在は給与天引きで住居費を払われているということですが、もし50歳でリタイアされる場合には、その後の住居費についてはこの「配当金収入」から捻出されるかと思います。
また、お子様が今後一人生まれた場合、ご相談者様ご夫婦が50歳時点で、高校生もしくは大学生といった年齢になっていることが考えられます。お子様が生まれた場合には、教育費や養育費については、投資部分とは別に積み立てておかれるとよいでしょう。
現在はまだ28歳とお若いため、今後昇給等も見込まれると思います。現在の生活水準を維持されるようであれば、現在の積立額を維持していくことも十分可能だと思います。現在の積立額(投資+貯金)45.5万円/月を継続された場合、利回りが0%だったとしても、
45.5万円 ✕ 12カ月 ✕ 22年 = 1億2012万円
となります。そして、利回りを少し保守的に考えて3%で運用できたとしたら、この金額は1億6984万円となります。
これに加えて、現在すでにお持ちの貯金2000万円、投資2000万円がありますので、50歳時点で金融資産総額として2億円を超えてくると見込まれます。
iDeCoの活用も検討を
iDeCoについては「60歳まで資金拘束があることに対して抵抗感を感じる」とのことですが、現在すでに4000万円もの金融資産をお持ちで、今後も積立を継続されていくことを考えれば、60歳以降で使うお金の置き場所としてiDeCoを活用されてはいかがでしょうか。60歳以前の時点で資金的に困るような可能性は極めて低いのではないかと思います。一方で、iDeCoはご存知かと思いますが、所得控除による税制メリットもあり、今後の毎年の所得税を節約できるので、税金面ではかなり魅力的な制度になっています。もう一度ご検討されてはいかがでしょうか。
アドバイスをまとめると……
以上、ポイントをまとめますと以下のようになります。
1)現在の投資方針は、50歳を目途に年間200〜300万円程度の配当金を得るという目標を達成するために適切でしょう。ただし、上述の通り、配当金等の点によっては、ポートフォリオの組み換え等も将来的には検討される必要があるかもしれません。
2)50歳以降のライフプランを具体的に想定しながら、「200~300万円程度」が十分か、考えていくことをオススメします。
3)iDeCoは税制上の優遇が大きい制度ですので、60歳以降に使うお金の置き場所と考え、活用を検討されてはいかがでしょうか。