コロナで強気、それとも弱気?個人投資家の相場観を探る

日経平均株価は2万2,500円前後でもみ合いが続いています。世界的な金融緩和や財政出動に対する期待感から先々株価がさらに上昇するとみる投資家が多い一方、米国やブラジルなど新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない国もあり、再びロックダウンなど経済の停止を迫られるとみる慎重な投資家も多くいます。そのため、上下どちらにも動きづらい相場が続いているのです。

では、個人投資家は先行きをどのように見ているのでしょうか?


「信用残」で個人投資家の相場観を探る

個人投資家の相場観を探るうえで有効な指標として、「信用取引残高(信用残)」が挙げられます。信用残とは、個人投資家が信用取引で建てた建玉(たてぎょく)の残高を示したデータです。

信用取引には先々の値上がり益を目的とした建玉を示す「信用買い残高」と、先々の値下がり益を目的とした建玉を示す「信用売り残高」があるため、値上がりと値下がり、どちらを予測しているのかをデータとして確認することができるのです。

上のグラフが示すとおり、個人投資家の強気を示す赤色の信用買い残高は、3月の新型コロナウイルス感染拡大に伴う暴落で急減した後、急速に残高を回復させており、ほぼ年初の水準を回復しています。

個人投資家については、新型コロナウイルスに伴う外出自粛の環境下で「在宅デイトレーダー」が増えている、などと報じられていましたが、そのような方々も含めて強気なポジションを増加させているのです。

一方、過去の信用買い残高が増える局面とは異なる傾向もみられます。個人投資家の弱気を示す青色の信用売り残高も増加しているのです。個人投資家は、強気だけではなく、弱気派のポジションも増加させているのです。

<写真:ロイター/アフロ>

中期的にはまだ上昇余地あり?

では、このような個人投資家の動向は先々のマーケットにどのような影響を与えるのでしょうか。

一般的に信用取引の買い建玉は短期的には株価の上昇要因となるものの、中長期的には利益確定売りを招くため下落要因になります。反対に売り建玉は短期的な下落要因となるものの、中長期的には利益確定の買戻しを招くため上昇要因と捉えられています。

上のグラフを見てもわかるように、現状では買い建玉も売り建玉も増加基調になっているため、両方の売買が打ち消しあって、マーケットは動きづらい展開が予想されます。しかしながら、過去のデータを見ると、信用の買い建玉はまだ伸びしろがある一方で、売り建玉は2019年のピークに近い水準となっています。

また、買い建玉と売り建玉を差し引いた赤色の折れ線グラフを見ても、まだ買いポジションに偏った状況にあるとはいえません。

このことから、信用残高でみる限り、短期的には上下どちらにも動きづらい状況にあるものの、中期的にはまだまだ上昇余地がある、と見ることができるのです。

<文:シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎>

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