「稲佐立体交差」平面化が難航 10月着工先送りか 長崎 新型コロナの影響で説明3カ月遅れる

稲佐立体交差平面化計画案

 長崎市宝町の国道202号と市道が交わる「稲佐立体交差」を、JR長崎線の高架化に伴い平面化する工事が、当初予定していた10月着工から遅れる可能性が出てきた。新型コロナウイルスの影響で住民説明会が約3カ月遅れた上、計画に難色を示す住民もいる。県側は「着工時期をずらしても意見交換の時間をしっかり取りたい」としている。
 稲佐立体交差は1965年3月に供用開始。周囲より低い「アンダーパス」となった国道202号の上面を、JR長崎線の旧線路や市道長崎駅東通り線、歩道が通る。今年3月にJR線路の高架化工事が完了したことを受けて県は本年度、周辺整備の一環として市道改良や同立体交差の平面化を進める方針だった。
 県の平面化計画案によると、国道202号は埋め立ててかさ上げし、市道と合流させる。ただ、既存の宝町交差点との距離が近く、渋滞を招く恐れがあるため信号機は設置しない。これまで長崎駅と銭座町付近を結んでいた市道と歩道は、国道で“分断”される形になる。
 県は10月着工に向け、3月に住民説明会を予定していたが、新型コロナの影響で延期。6月下旬にようやく宝町、幸町、八千代町の周辺3町を対象にした説明会が開かれた。
 住民からは「歩行者は遠回りになり、使い勝手が悪い」「地域が分断される」などの声が上がった。幸町自治会の末永久志会長は「歩行者や地元住民の視点が欠けた計画で、寝耳に水」と難色を示す。同自治会は今月9日、「利便性の向上につながらない」として、県に現状維持を求める要望書を提出した。
 同工事は2021年度末の完了を目指しているが、県長崎振興局都市計画課は「住民と意見交換する時間が不足している」として、着工時期を先送りしてでも説明会を重ねていく方針。同課の川原征吾課長は「多くの住民の声を聞き、一緒に知恵を絞って最善策を探っていきたい」と話した。

市道長崎駅東通り線や旧線路の下を国道202号が通る稲佐立体交差=長崎市宝町

© 株式会社長崎新聞社