いつ、どこで起きるか

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 61年前、5千人を超える死者・行方不明者が出た台風を、歌人の久保田安治さんはこう詠んだ。〈伊勢湾台風の罹災者(りさいしゃ)なほ屋根にあり宇宙ステーション軌道にのる日も〉▲この年、旧ソ連は探査機を月に送り、裏側の写真撮影に成功している。人類が科学技術を進歩させ、宇宙に夢を描く一方で、自然の猛威にはなすすべもない。一首はその対比を詠んでいる▲局地的に、長い間、猛烈な雨をもたらす。積乱雲が連なる「線状降水帯」という言葉を近年、よく見聞きするようになった。ここ数日、大雨が各地を襲い、川があふれたのもこの現象によるというが、発生する時刻、場所の予測は困難らしい▲熊本県南部の豪雨では、未明に球磨川が危険水位に達した後になって「大雨特別警報」が出され、避難指示が発令された。線状降水帯が迫るのを想定できなかったという▲天気予報の精度がぐんと上がったのは誰もが認めるところだろう。英知を集めてもなお、連なる雨雲の動きは読めず、〈罹災者なほ屋根にあり〉の悲痛なさまは今昔、変わらない▲このところ列島では毎年のように大水害がある。それがいつ、どこで起きるか、見定めがたい。避難指示を待たずに避難するなど身の守り方を人それぞれ考える時らしい。「読めない空」と向き合う日々がまだ続く。(徹)