世界一の観光都市パリが思い描くコロナ後の「観光トレンド」

フランス政府は6月15日から欧州域内の国境閉鎖を解除し、7月1日からは、日本含む13ヵ国からの入国制限を解除しました。これまでフランス入国時に必須だった14日間の自主隔離や必要書類の携行がなくなり、フランスへ入国する旅行者にとって、また一つ制限が緩和された形です。

フランスは世界でもっとも観光客を集める国です。例年であれば、これから夏の観光シーズンを迎え、多くの旅行者が訪れます。新型コロナウイルスの影響は、今夏の観光にどのような影響を与えるのでしょうか。パリ観光会議局局長のコリーヌ・メネゴーさんに聞きました。


ローカルを中心にしつつも欧州からの需要も視野

コリーヌ・メネゴーさん

──今夏の状況をどう予想していますか?

遅れて始まった今夏の観光シーズンは、例年より短く終わっていくでしょうね。しかし、バカンスに出かけたいという欲求とニーズは、すべての人の中にあります。限られた範囲と手段で、それぞれの国や地域において休息は許されるでしょうし、旅行もされていくはずです。

──パリについては、どうですか?

まずパリ観光会議局は、パリおよびイル・ド・フランス(パリを中心とした地域圏)の居住者に主眼を置いています。しかし、隣国からの旅行者にも焦点は当てています。移動のハードルが下がり安全が確保された状況になればですが、それより遠方の市場からの旅行者が戻ってくることも、私たちは待ち望んでいます。

──今、パリ観光会議局が優先的に取り組んでいることは何ですか?

パリを訪れる人々が、パリでの滞在を不安なく準備できるよう、安心してもらうことです。

──短期的には今後の観光をどう考えていますか?

パリ観光会議局としては、今後ローカル・レベル(パリおよびイル・ド・フランス)でキャンペーンを張る計画をしています。またBtoBの市場においては、フランス国内およびヨーロッパ市場に向けたキャンペーンも考えています。それより遠方の市場については、移動における公衆衛生および経済状況が完全に安全であるということがお互いに分かってからの、第二段階になります。

──長期的にはどうですか?

長期計画について練り上げるには、まだ早すぎますね。しかしながら、新年度(9月)というのは一つの節目です。パリというものを訴求してくために、メディアやインフルエンサーと共に広報活動をする重要な時期です。海外の観光事業者との連携も、私たちの主な関心事です。

コロナ禍がより強めた観光の「持続可能性」

──6月15日以降、欧州域内の国境閉鎖が解かれましたが、大きな変化はありましたか?

国境の再開、および公衆衛生の改善といった最近の発表によって、見通しはよりポジティブになっています。人々は旅行したいと、あらためて考えています。地元の人が中心になるとしても、パリとフランスは外国人、とりわけヨーロッパの人々にとって主要な目的地です。今夏は直前で予約が多く入るはずです。

──コロナ以前の状況に戻るのはいつだと思いますか?

これにお答えするのは時期尚早です。パリは年間平均3,800万人が訪れます。昨年に比べて、今年は全体で少なくとも25%ほど活動が減少すると予想されています。しかし、すべては今夏と今年末の回復次第です。

──パリ市はこれまで、既存の観光形態ではなく、環境やサステナブルな面からの観光に力を入れてきました。コロナ後に観光のトレンドはどうなっていくのでしょうか?

今回のコロナ禍は、コロナ以前からすでに出現していた傾向を加速させることになりました。発見と体験への渇望する旅行者の気持ちは、常に大切なことです。私たちにとっても、未来に則した方法でパリをプロモーションしていくことは、コロナ禍以前から暗中模索し、ずっと取り組んできた道です。

──フランスは世界でもっとも観光客が訪れる国です。その中で常に新しいことに取り組んでいますね。

パリはすでに、より持続可能でより思慮ある観光を巡って、新たな価値を多く見つけることができています。多様性から質までを備えた、世界トップの観光中心地としての地位を維持するために、私たちは進んでいます。永続性。これが明日への賭けであり、明日のパリです。

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