諫早のJR長崎線2事故 非常ボタンの有無で明暗

設置3分の1、安全対策の再点検を

©株式会社長崎新聞社

踏切で脱輪し、特急列車と衝突した乗用車(中央)=6月24日、諫早市高来町のJR小江第2踏切

 6月下旬、長崎県諫早市内のJR長崎線の踏切を走行していた車両が縁石から脱輪し、立ち往生する事故が相次いだ。1件は特急列車と衝突。もう1件は非常ボタン(踏切支障報知装置)を押し、衝突を免れた。いずれも人命にかかわる重大事故の危険性をはらんでおり、非常ボタンの有無が明暗を分けた。

 6月24日夕、高来町のJR小江駅構内。踏切端の縁石から乗用車が脱輪して立ち往生する中、特急列車が衝突した。乗用車は線路脇に飛ばされ、大破した。けが人はなかった。目撃者が踏切そばの看板に書かれているJR九州の緊急連絡先に電話したがつながらず、110番通報したという。
 踏切幅は約3メートル。両端に縁石が設置されているが、車1台が辛うじて通れる程度。目撃者は「民家が近くに密集し、生活道路で使う人が多い。非常ボタンの設置を長年、求めていたのに。緊急連絡先に電話をかけても間に合わない」と嘆いた。
 6日後の6月30日夜には、久山町の踏切で乗用車が縁石から脱輪した。諫早署によると、関係者が非常ボタンを押し、特急列車は踏切に差しかかる前に停止した。その間、乗用車は踏切外に脱出し、難を免れた。この踏切は道幅も狭い上、周辺の産業団地とスポーツ施設方面や大村市方面への抜け道として利用する車両が多い。
 JR九州長崎支社によると、主に本県を走行する長崎-肥前大浦(佐賀県太良町)間にある踏切は、長与回りも含めて63カ所。警報器と遮断器が設置されている踏切は61カ所、警報器のみが2カ所。非常ボタン付きは全体の3分の1弱の20カ所。同支社は「鉄道交通量と道路交通量を勘案して設置している」と説明する。
 諫早署交通課は、相次ぐ踏切内の脱輪事故について「車の運転席側から左端にあたる縁石が(死角となり)見えにくいのかもしれない」と分析する。「講習や安全教育の場を通して、踏切の安全な通行方法を指導、周知する。縁石上へのポール設置などの事故防止対策についても、県警本部を通して踏切を管理するJRと協議ができたらいい」と話す。
 住民の中には、2022年度の九州新幹線長崎ルートの暫定開業を控え、在来線への影響を心配する見方もある。「在来線の設備投資が減る恐れがある。特急列車が廃止されてもこれまで同様、住宅地の近くや交通量の多い踏切は残り、危険性は変わらない」。安全対策の再点検が求められる。

衝突事故が起きた踏切に非常ボタンはなく、緊急連絡先の電話番号が書かれた看板(右端)がある