高齢者どう守る 7.13水害16年 「垂直避難」推奨も、状況把握が課題

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田島橋から上流の方向を見た五十嵐川。堤防は整備され、多くの市民がランニングや散策を楽しむ=三条市田島

 新潟県三条市などに大きな被害をもたらした2004年の7.13水害から13日で16年となる。三条市は毎年、水害対応総合防災訓練を行い、マニュアルを見直すなど備えを進める。しかし、新型コロナウイルスのような感染症や、九州を中心に降り続ける記録的な豪雨など、過去になかったような災害が日本全国を襲う。新たな脅威を避けながら、いかに住民の安全を、特に「災害弱者」といわれる高齢者の安全を確保していくのかが課題となっている。

 6月21日の避難訓練では、市はウイルスの感染予防に配慮した。1人当たりの面積を3平方メートルから4平方メートルに拡大、避難所の入り口で検温し発熱者を別室へ誘導、段ボール製の間仕切りで避難者の接触回避などの新たな対策を取った。

 市は以前から、建物の2階などへ避難する垂直避難を推奨している。5年に1回のペースで水害を想定したハザードマップを作成。信濃川や五十嵐川、刈谷田川などが決壊した場合、自分の住んでいる場所が家屋倒壊の危険があるのか、垂直避難が可能なのかを地図に落とし込んでいる。今回の訓練でも、可能な住民には垂直避難を呼び掛けた。

 しかし、訓練当日、三条第二中に避難してきた同市林町1の男性(64)は心配を口にした。自宅が五十嵐川に近く、垂直避難では不安を感じるため、1キロほど離れた避難所に来た。「避難所までが遠いと感じた。地域では高齢化が進み、抱えて避難しなければならないお年寄りも多い。災害時に3密を避けながら、迅速に避難できるか心配」とつぶやいた。

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 三条市は水害の翌年の05年に下田村、栄町と合併した。市高齢介護課の統計では、05年度末の65歳以上人口が占める高齢化率は23.1%。19年度末は32.2%で、約10ポイント上昇している。1人暮らしの高齢者世帯の割合も8.2%から15.4%に上昇している。

 市は08年に市内の介護事業者などと「災害時等における要援護者の緊急受け入れに関する協定」を締結した。支援が必要な高齢者や障害者を要援護者として名簿に登録。災害発生時に介護事業者が自宅から施設まで搬送する。現在、基準に該当する要援護者は約2千人。その内、施設などに入所していない約1300人を名簿に登録している。

 同市東裏館3の特別養護老人ホーム「うらだての里」も要援護者を受け入れる。大山強一園長は、ウイルス感染が広がる現状では、要援護者についても垂直避難を勧めるという。ただ、垂直避難を促した場合には、家屋にとどまった要援護者の状況把握が課題となる。「高齢者1人世帯が増加しており、垂直避難を推奨するためには、市や自治会と小まめに情報を共有し、自宅で孤立する高齢者が出ないようにすることが不可欠」と指摘する。

 その上で「避難所ではベッドが必要な高齢者も多く、スペースを確保するためには準備が必要。感染症が広がる中では、行政は空振りでもいいので、避難準備、勧告などの指示を早めに出してほしい」と要望する。

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 市は訓練で得られた改善点などを共有し、今後の防災マニュアル作りに生かしていく。しかし、九州や本州を襲った豪雨のように、想定していないような災害が毎年のように発生している。

 市の災害対応の中心的な役割を担う行政課の小林和幸課長は「近年の天候を考えると、訓練の想定やマニュアル作りについて、もっとハードな状況を頭に入れながら対応していかなくてはならない」と警戒を強めている。

【7.13水害】2004年7月12日夜から13日夕にかけ、三条市や中之島町(現長岡市)などを中心に猛烈な雨が降った。五十嵐川や刈谷田川が13日午前に警戒水位を超え、同日午後から両河川の堤防が決壊、濁流が住宅や田畑に流れ込んだ。県のまとめでは、三条市9人、中之島町3人など計15人が死亡し、82人が重軽傷を負った。住宅被害は全壊71棟、半壊5657棟。床上浸水は1882棟、床下浸水は6197棟に上り、約1万8千人の住民が避難した。