鷹・工藤監督が期待する次なる星 5点差の9回に4日前炎上の笠谷を登板させた狙い

ソフトバンク・工藤公康監督【写真:藤浦一都】

高橋礼の8回は「しっかり抑えたかったというのがある」

12日の楽天戦に6-1で快勝し、今季初の3連勝とした昨季の日本一球団ソフトバンク。この試合では先発の石川柊太投手が7回まで1失点と好投し、打線も柳田悠岐外野手の先制ソロなどで中盤までに6点を奪ってリードを広げた。

その終盤、密かに注目していたのが、ソフトバンクの投手起用だった。リードは5点ある。そしてこの日は6連戦の6試合目。翌日は移動日で試合がない。勝ちパターンの投手を送り込んで万全を期して逃げ切りを図るのか、それとも勝利の方程式を温存して、別の投手で乗り切ろうとするのか。ここで工藤公康監督はちょっと意外な起用をした。

8回にはここ最近セットアッパーで起用している高橋礼投手を送った。こちらは“勝ちパターン”の投手だ。ただ、9回にはリバン・モイネロや守護神の森唯斗ではなく、この6連戦の第2戦で先発し、2回7失点でKOされていた笠谷俊介投手を登板させたのだった。

試合後、工藤公康監督はまず、この試合を逃げ切るポイントとして、8回の守りを挙げた。6番のロメロから下位打線に続いていく打順。指揮官は「あそこの回はしっかり抑えたかったというのがあります。あそこで1点でも取られると、また9回に、という風にもなりかねない。8回だけはしっかり抑えたかったというのがあります」。8回をゼロに抑えることを重視し、勝ちパターンの一角である高橋礼を投入した。

笠谷への期待「勝っている時に、というのを考えていきたい」

9回の笠谷について、指揮官にはまた異なる意図があった。4日前に楽天打線につかまっていたが、工藤監督の評価は高く「僕の中では彼の持っているボールは素晴らしいと思っている。左ということもあるし、頭の中には勝っている時のワンポイント、ツーポイントだったり、長めに投げてもらったり、というのを考えていきたい部分がある」と明かす。

高橋礼、モイネロ、森、そして嘉弥真と勝ちパターンで投げる投手に続く存在として、笠谷を試したいという狙いがあるという。今季は6連戦がひたすら続く過密日程。特に勝ちパターンの負担軽減として、多少のビハインドの展開や、今日のような5点や4点という、方程式を送り出すがどうかを迷うような展開で安心して送り出せるリリーフとして笠谷を計算しているのだ。

「勝ちパターンの投手ばかりでいくと疲弊してしまう。ああいうところで笠谷くんがピシッといって、安心して送り出せるようになると、また勝ちパターンの投手を休ませることができる」。6連戦が続く2020年シーズン。この日の投手起用は、目先の1勝だけじゃなく、この先の展望を見据えたテストの意味合いもあったようだ。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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