守護神が欠けるだけじゃない 阪神OBが語る藤川離脱が与える影響の大きさ

阪神・藤川球児【写真:津高良和】

4球団で捕手としてプレーした野口氏が語る藤川不在の影響とは

阪神は12日、本拠地の甲子園球場で行われたDeNA戦に2-1で勝ち、カード勝ち越しを決めた。先発の岩貞祐太投手が8回3安打無失点の快投で今季2勝目。この日、右肩の不調で登録抹消された守護神の藤川球児投手に代わり、ロベルト・スアレス投手が9回に登板して今季初セーブを挙げた。

5回途中まで無安打に抑え、7回までは二塁すら踏ませなかった岩貞。強力なDeNA打線を全く寄せ付けない圧巻の投球だった。「球のキレもコントロールも素晴らしかった。ここまでいい岩貞を見たのは久しぶり」。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーし、2018年までヤクルトで2年間、バッテリコーチを務めた野球解説者の野口寿浩氏は、そう手放しで評価した。

8回の時点で岩貞の球数は114球。十分完封を狙える状況ではあったが、8回裏にリードが2点に広がり、9回は継投を選択した首脳陣。野口氏は「岩貞を行かせてあげて、ランナーを背負ったら替えるということをしても良かったと思います。ただ、ずっと1点リードで投げてきた投手がもう1点もらうと、ふと気持ちが抜けることもある。そこは首脳陣の判断だったと思います」と推し量った。

代役を務めたスアレスはひとつのモデルケースになる、と野口氏

その9回のマウンドに上がったのが、これまで8回を担ってきたスアレスだ。前夜11日に救援に失敗した守護神の藤川が登録抹消となった中、クローザーに昇格した格好に。四球や自身のエラーが絡んで1点は失ったものの、なんとかリードを守りきった。「9回はスアレスというモデルケースになった試合だったと思います。このまま結果が伴っていってくれれば」と野口氏は見据える。

だが、藤川の不在は救援がただ1人いなくなったのとは訳が違う。「投手陣全体に与える影響や安心感は、他の投手とは全然違う。離脱は非常に痛い」と野口氏は見る。この日は岩貞の好投もあって救援陣の負担は最小限で済んだが、今季はいまだ先発陣の完投はゼロ。さらに今後の過密日程で、必ずブルペン陣の厚みが問われてくる状況はやってくる。

現状の勝ちパターンである岩崎優投手とスアレスを8、9回に充てたとしても、7回をどうするのか――。野口氏は一案として、若手らの台頭に期待する。3年目の馬場皐輔投手は今季これまで4試合に登板して無失点。さらに高卒5年目の望月惇志投手や伊藤和雄投手の名前も挙げ「誰かひとりでもいいからメドがついてくれば」。それに加え、故障で出遅れている桑原謙太朗、島本浩也両投手らの早期1軍復帰もブルペン安定のカギに挙げる。

それでも野口氏は「球児が1日も早く戻ってくるのが一番。いつもの状態でマウンドに上がれば、名前だけで抑えられる。それだけ球児の存在感は違う」と強調。替えの効かない精神的支柱が再び9回を担えるようになるまで、リリーフ総動員で終盤のマウンドを守っていけるかが、最下位からの浮上のポイントになってきそうだ。(小西亮 / Ryo Konishi)

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