コロナ禍「手探りの就活」 大学生、売り手市場に陰り 高校生、選考開始日変更で受験機会減

パソコンを使って学生とやりとりする担当者=長崎市常盤町、メットライフ生命長崎本社

 新型コロナウイルスの感染拡大は、大学生や高校生の就職活動にも影響を与えている。大詰めを迎える大学生の就活は接触を控えようと面談や面接をウェブで実施する企業が増え、就活風景が一変。コロナ禍の影響で、近年の「売り手市場」にも陰りが見え始めた。高校生の就活は、スケジュールが1カ月後ろ倒しになったことで、学校行事と重なり急きょ行事日程を変更する学校も。いずれも例年と異なる事態となり、企業も、学校も、学生も、手探りの活動となっている。

◎大学生 売り手市場に陰り

 「声は聞こえていますか。画面は見えていますか」。ウェブ会議システムを活用した企業面談会。メットライフ生命長崎本社(長崎市)の採用事務局のスタッフが、パソコンの向こうにいる就活生に向かって声を掛けた後、会社説明が始まった。
 同本社は、今年初めて面談と面接にウェブを活用。面接の場合も通信環境の確認を兼ねた雑談後に、面接官が“入室”。慣れない手法の面接でも学生が緊張しないよう工夫している。
 県境をまたぐ移動や対面による新型コロナの感染を防ぐため、企業は例年と異なる採用活動を余儀なくされている。長崎市のサービス業は4月以降、ウェブ上で順次面接を実施。1次面接から最終まで1度も会わないまま内定を出した学生もいる。
 担当者は、県外の大学に進学した学生とも時間や場所の制約がなく面談や面接ができる点を評価する一方、課題に挙げるのは学生の雰囲気が分かりにくい点。「パソコン越しでは意欲があるかどうか感じ取りにくい。来年以降、面接でウェブを使うことはないと思う」
 大光食品(島原市)は4月から約2カ月間、採用活動を中断。面談にウェブを使ったこともあったが、学生からも1度は会ってほしいと要望があり、対面に戻した。例年だと7月上旬には採用活動を終えるが、今年は9月上旬ごろまでの長期戦になる見通しだ。
 コロナ禍は近年の就活の潮目も変えた。長崎労働局の担当者は「企業の業績悪化などで求人数は減るだろう」とみる。採用に慎重な企業が増え、学生優位の「売り手市場」だった昨年までとは一変しそうだ。
 今春、高校生と大学生合わせて12人が入社した長崎市内のホテルは、来春の採用を若干名にとどめる予定。数カ月に及ぶ休業で売り上げは低迷し「今いる従業員の雇用だけでいっぱいいっぱい」と担当者。来春は採用を中止する予定だったが、他業種を含め求人数が少ないと聞き、方針転換した。
 長崎大キャリアセンターによると、旅行業や観光業などで採用活動を中断する動きがあり「例年では考えられない事態」になっている。希望する介護系の企業の採用面接が中断していたという同大4年の女子学生(22)は「再開しなかったらどうしようと不安だった。ウェブで面接が始まったので、画面の中で精いっぱいアピールしたい」と話した。

◎高校生 選考開始日変更で受験機会減

 高校生の選考は9月の予定から1カ月遅れてスタートする。「計画通りが1番よかったが、致し方ない」。例年、卒業生の7割超が就職する県立大村工業高の北島弘明副校長は語る。
 厚生労働省は、コロナ禍で休校が続き、就活の準備期間が十分に確保できていないとして今年のスケジュールを変更。学校から企業への応募書類の提出を10月5日、選考開始を同16日とし、それぞれ1カ月遅らせた。同高3年の男子生徒(17)は「準備する時間が長くなってよかった」と前向きに受け止める。
 だが、10月は体育祭や文化祭など学校行事が集中する時期。行事と採用試験の日程が近くなり、学校側は対応に追われる。
 同高はいくつもの協議を重ね、体育祭の日程を1週間前倒し、中間試験の中止も決めた。別の公立高は、文化祭の日程変更を検討したが、調整が付かず断念。就職指導の教諭は「学校行事は年度はじめに綿密に計画しており、一つ変わるだけで大混乱する」と変更する難しさを語る。
 長崎女子商業高の進路担当教諭が懸念するのは、生徒が採用試験を受ける機会が減ることだ。例年、1社目が不合格でも年内にさらに2社程度受験する時間的な余裕があった。だが今年は選考開始が遅れる分、受験数も減るとみられ、教諭は「求人数も減る中、何とか卒業までには決めさせたいが…」と不安げに語る。
 今後、各学校は生徒が受験する企業を決める校内選考会議を控える。各学校の担当教諭からは、就活スケジュールの変更に伴い、企業が求人票を提出する時期も遅れないか不安視する声が上がる。「(求人票提出がないと)生徒は企業の概要をつかめず、希望を確定できない。その結果、県外流出にもつながりかねない」として、早期の求人票提出を求めている。

高校生の就活日程

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