“もう一つのプロ野球”から“一つのプロ競技”へ eBASEBALLのビジネス化に迫る

「eBASEBALL プロリーグ」が目指すビジネス化への取り組みとは【写真提供:(c)Nippon Professional Baseball / (c)Konami Digital Entertainment】

数少ないeスポーツビジネス化への挑戦、eスポーツが日本で定着するには?

「eBASEBALL プロリーグ」は、一般社団法人日本野球機構(以下、NPB)と株式会社コナミデジタルエンタテインメント(以下、KONAMI)の共催という形で発足した「実況パワフルプロ野球」(以下、パワプロ)のプロ野球 eスポーツリーグ。そのリーグのこれまでの軌跡とこの先の展望について、主催のNPB、KONAMIを代表して谷渕弘氏(KONAMI/eBASEBALL プロリーグ 統括プロデューサー)にインタビューを行った。

第4回は「“もう一つのプロ野球”のこれから」。「eBASEBALL プロリーグ」が目指すビジネス化への取り組みや今後の競技の広がりについて取り上げる。

2019シーズンには新たな取り組みとして、球場内のバーチャル看板、音声広告などを導入。球場の売り子さんが実際に商品を売っているような音声広告は印象的だった。他にも看板直撃賞やホームラン賞などのコラボ企画も実施。プロ野球と同様にチケットやグッズの販売も行い、今後もさらなる収益化への検討を進める。同時に、人がいなくてはビジネスは成り立たない。ファンの獲得、そして競技人口の拡大は大きな課題だ。「ビジネス面はまだまだ厳しいです」と谷渕氏は切り出す。

「まだまだ日本では、ゲームは遊びであり、スポーツではないという考えが根強いです。ただ、草野球のように、実際に体を動かすスポーツでも、競技としてではなく趣味として楽しんでいる人もいます。eスポーツがプレイヤーだけではなく、さまざまな視点で楽しんいただけるというものだという理解が進めば、日本でのeスポーツの裾野も広がってくるのではないかと思います」

さまざまなゲーム大会のなかで「eBASEBALL プロリーグ」にしかない魅力とは

さまざまなゲーム大会の開催が増えるなか、「eBASEBALL プロリーグ」にしかない魅力とは何か。

「まず実際のプロスポーツがあり、それをけん引しているNPBとKONAMIとの共催で行われている点です。選手データは実際のプロ野球の成績を反映しているので、完全なバーチャルではなく、リアルのプロ野球の影響を受けるところは、野球ゲームファンだけではなく、プロ野球ファンにも楽しんでいただけるかと思います」と谷渕氏。さらに、プレイヤーについてはこうも語る。

「プロプレイヤーには学生時代に野球をやっていた方が多いです。ケガで野球や他のスポーツのオリンピック日本代表の道を諦めた方、『eBASEBALL プロリーグ』に参加するために公務員を辞めた方、現役の球団職員の方など、個性あふれるプロプレイヤーが多くいます。彼らがeスポーツという舞台でプロ入り、そして日本一を目指す過程を楽しむことができるのも、本物に近い構成が一因であると思います。この筋書きのないドラマをより多くの方々に楽しんでいただきたいです」

現実のプロ野球と重ねたり、比較するのはプレイヤーにとっても、ファンにとっても楽しみの1つで、「eBASEBALL プロリーグ」にしかないものだろう。なにより、プレイヤー個人の力やリーグにかける思いはまさに“プロ”であり、実際のプロ野球選手に勝るとも劣らない。最後に谷渕氏は「課題は山のようにありますが(笑)」と踏まえた上で、今後の課題を語った。

「大きなところでは『eBASEBALL プロリーグ』の認知拡大、コンテンツの更なるブラッシュアップ、そして何よりビジネスとして成立させていくことです。課題は多いですが、これまでの経験で得たものも多くあり、賛同者も少しずつ増えてきていると感じています。『eBASEBALL プロリーグ』は、他のeスポーツと状況が異なるところが多いと感じていますので独自で正解を探し出さなければいけないとも思っています。“野球のeスポーツ”ではなく“eBASEBALL プロリーグ”を追い求め、創り上げていければと思います」

eスポーツはまだマイナーな存在だ。だが、将来的には大きなコンテンツとして期待もされる。「eBASEBALL プロリーグ」は“もう一つのプロ野球”から“一つのプロ競技”へ。その歩みは確実に前へ進んでいる。(「パ・リーグ インサイト」丹羽海凪)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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