大人の世界のミステリー、洋画「ナイル殺人事件」の主題歌を歌っていたのは誰?

1978年 12月9日 映画「ナイル殺人事件」が日本で公開された日

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アガサ・クリスティ原作のミステリー映画「ナイル殺人事件」

子どもにとって、大人の世界が、とてつもないミステリーに思える時期がある。自分の場合、振り返ると、それは小学6年~中学1年の頃だったかもしれない。変声期が訪れ、チン毛が生え始めるなど肉体の異変に困惑していた時期。

小学6年、忘れもしないその年、アメリカに遅れること1年を経て『スター・ウォーズ』が公開され、自分は映画という魅力的な世界にのめりこむ。映画館で、映画と向き合うことの興奮、自分だけの空間を見つけた喜びと、暗闇のいかがわしさ。そして英語の映画を見ることに、ちょっと大人になったような気分がして、洋画熱はどんどん高まった。

その年末に見たのが、アガサ・クリスティ原作のミステリー大作『ナイル殺人事件』。お目当ては、同時上映のアニメーション『ルパン三世』だったが、完全にこっちの面白さに魅了された。戦闘描写はないが、面白い。愛憎! 大人の世界!! このミステリーがすごい!!!

ミステリーは続く…「リトル・ロマンス」と「マッド・マックス」主題歌

『ナイル殺人事件』に魅了され、エンディングで流れていた主題歌『ミステリー・ナイル』のレコードを買った。歌っているのはサンディー・オニールという方。歌詞も英語だ。洋楽のレコードを初めて買った! そして何度も何度も聴いた…… あらかじめ、このオチを話しておこう。実は、このレコードは洋楽ではなくて、日本で作られた立派な “邦楽” だった。それを知るのは、もう少し後のこと。

最初にミステリーを感じたのは、1979年の夏に公開された、ダイアン・レインのデビュー作『リトル・ロマンス』。映画にいたく感動して、主題歌『サンセット・キッス』のレコードを買った。歌っているのはパオという方。A面は映画で流れていた英語の歌だが、B面には日本語バージョンが入っている。しかもパオさん、このバージョンの日本語がやたらと上手い。なぜだ!?

決定的だったのは同年の冬に日本で公開された『マッド・マックス』。やはり映画に惚れ込んで、映画の最初と最後を彩る英語の主題歌『マッド・マックスのテーマ』のレコードを購入。歌手名は串田アキラ…… くしだあきら!? ちょっと待て、これはどう見ても日本人だろ!?

当時の外国映画の日本公開バージョンには、このような日本のみの主題歌がフィーチャーされるケースが、しばしば見られた。『ナイル殺人事件』がTVで初放映されたとき、ワクワクしながら見たのだが、さんざん聴いたあの主題歌がどこにも流れない。エンディングではニーノ・ロータによるスコアが流れるのみ。これが映画の本来のラストである… と、そのとき悟った。

興行の工夫は面白い、“なんちゃって主題歌” も好きだった!

こんな改変をされて、オリジナルの映画を作った外国の人たちはどう思うのだろう…… などと気にはなったが、それでも騙されたような気分にならなかったのは、結局のところ映画も、その “なんちゃって主題歌” も好きだったから。それゆえに、日本での加工のいかがわしさを含め、興行の工夫は面白いなあと思えた。チン毛が生えそろい、大人の世界のミステリーがひとつ解けたとき、ますます映画が好きになっていた。

ちなみに、『ナイル殺人事件』の主題歌を歌ったサンディー・オニールさんは1980年、細野晴臣のプロデュースのもと、サンディーの名でアルバムを発表。その後、久保田麻琴と組んでサンディー&ザ・サンセッツのフロントマンとして活躍する。

カタリベ: ソウママナブ