同期の女に外見をディスられ、奮起した結果…。皆の態度が一瞬で変わった作戦とは?

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およそ1,400万人が暮らす、現代の東京。

そのうちの実に45%が地方出身者で占められているという。

東京にやってくる理由は人それぞれ。だが、そこに漠然とした憧れを抱いて上京する者も少なくないだろう。

これは、就職をきっかけに地方から上京した女が、東京での出会いや困難を経験して成長していく「社会人デビュー」物語。

大都会・東京は、はたして彼女に何を与えてくれるのか…?

◆これまでのあらすじ

2019年4月。生まれ育った北海道を離れ、上京した美咲は、同期達の華やかさに圧倒されてしまった。

さらに同期の瑠美から心無い言葉をぶつけられた美咲は、玲奈と再会し、打ち明けたところ…。

「えっ!?私の…プロデュース計画ですか?」

美咲は、カフェで周囲の目もはばからず、思わず素っ頓狂な声をあげた。

目の前では、先輩の玲奈がにっこりと微笑んでいる。

「そう。美咲ちゃんの改造計画を、私に手伝わせてほしい!アドバイス出来ることがいろいろとあると思うの」

玲奈は名案を思い付いたと言わんばかりに、嬉しそうにダージリンティーを口に運ぶ。

確かに彼女は、国内最大手化粧品メーカーで広報として働いており、その美しさは学生時代から際立っていた。

唐突な提案に驚くのと同時に、親身になってくれる玲奈の存在がとても心強いのは確かだ。しかし美咲は不安げに目を泳がせ、心の迷いを吐露した。

「でも…玲奈さんはもともと美しいから…」

同じく社会人から上京した身とはいえ、そもそも玲奈とはスタート地点が違う。彼女は、最初から垢抜けていたに違いないのだ。

それに瑠美から意地の悪いことを言われたときのように、これ以上恥ずかしい思いをするのは御免だった。

ーだから、人には頼らず自分の力で頑張ろう…。

すると、うつむく美咲の本心を見透かしたのか、玲奈はこう言った。

「それは違うわよ、美咲ちゃん。実はね、私…」

「実は私、昔は…」。美しくて完璧な玲奈が告白した、意外な過去とは…?

美咲が玲奈に出会ったのは、大学1年のとき。学年が3つ上の玲奈は、大学4年生だった。

あのとき、群を抜いて圧倒的に美しく、垢抜けた玲奈を見て、衝撃を受けたことをよく覚えている。

「でもね、自分で言うのも変なんだけど…。実は私、もともとはちょっとダサかったの」
「え!?ダサかった?玲奈さんが、ですか?」

驚いて目を丸くする美咲をよそに、玲奈は何かを懐かしむように話し始めた。

どこか遠くを見つめながら話す玲奈の目元は、長いまつ毛が上品にカールされていてそれすらも美しい。彼女が昔ダサかっただなんて、想像もできなかった。

「だけど、あるきっかけがあったのよ」

「きっかけ?」

美咲は、続きが待ちきれずに身を乗り出した。

「そう。1年生の頃に、いい感じの彼がいたんだけど…」

当時、玲奈には付き合う寸前までいった彼がいたという。

ところが、突然フラれたのだ。花火大会に誘ったら予定があると断られたのに、実は玲奈の親友とその花火大会に行っていたことが発覚して、裏切られたような気持ちになった。

「その時はとてもショックだったわ」

「玲奈さんでも、そんなことがあるんですね…」

これまで、玲奈は自分とは違う人種だと考えていた。もちろん美咲も、それなりに可愛いと自負してきたが、なんというか、玲奈は別格だからだ。

大学内、いや地元で玲奈のことを知らない人はいなかったし、彼女が国内最大手化粧品メーカーへと就職が決まった際も、皆が納得していた。

まとっている雰囲気が華やかで、そんな彼女はいつも皆から羨望の眼差しを向けられていた。

玲奈自身の努力ももちろんあるだろうが、これまでの人生の中で、ことさら恋愛においては、「挫折」や「失敗」なんて経験してこなかったのだろうと思いこんでいたのだ。

だからこそ玲奈の告白は、美咲にとって意外だった。今まで「憧れ」という存在でしかなかった彼女に、少し親近感が芽生える。

「それで、そのときに悔しくて、絶対に綺麗になってやるって誓ったの」

メイクやファッションにもともと興味はあったが、イマイチ自分の魅力を引き出せていない。そう気づいた玲奈は、自分の見せ方を研究することに没頭した。

「それで必死に努力して、外見を変えたのよ。その結果お化粧品が大好きになって、今の会社を目指す良いきっかけにもなったし、人間万事塞翁が馬かしらね」

あっけらかんと笑う玲奈は、すがすがしくて、とても綺麗だった。

「だからね、これって何も外見だけの話じゃないと思うけど、何かきっかけがあって皆努力して変わるのよね。私の場合は失恋、美咲ちゃんはきっと今がその時なのかもね」

「はい…東京に来て同期の雰囲気を見て、私もそうなりたいと思ったんです。それにやっぱり瑠美にあんなこと言われて、悔しいですし…」

うんうん、と玲奈は頷きながら、美咲の思いを聞いてくれる。その姿は、まるで頼りになる姉のようだ。

「もちろん、外見を美しくすることは義務ではないのよ。こうならないといけないなんてないし、美咲ちゃんは今でも可愛い」

そして美咲の手をとると、きっぱりと言った。

「でも変わりたいと思うのであれば、私も力になるわ。これでも化粧品メーカーに勤めている身として、とりわけ外見的なことはアドバイス出来るし。その瑠美って子、見返してみせましょ」

こうして美咲にとって、力強い存在が味方となったのである。

さっそく、玲奈のアドバイスを実行する美咲。プロデュース計画はうまくいくのか?

―よし!玲奈さんに習ったことを活かしながら…まずは髪ね。

迎えた日曜日。休日ではあるが、この日は同期何人かと集まって飲み会をしようという予定があった。

玲奈の言葉を思い出しながら、美咲は丁寧に髪を巻き始める。

”これからは仕上げに、N.っていうヘアスタイルブランドが出しているアイテムを使ってみて。入社式の時に見たっていう、同期の子のウェットな質感の髪型って、きっとヘアスタイリング剤でつくっているのよ”

これまで髪を巻いた後はケープでがちがちに固めていたが、玲奈から教えてもらったものを使用すると、確かに“今っぽい”仕上がりになった。

―確かに地方出身感あったのかも…。でも瑠美ったら、あんなにはっきりと言うなんて。

髪型が良い感じに決まったところで、次は洋服だ。玲奈のアドバイスを書き留めたノートを片手に、クローゼットの中を吟味する。

”美咲ちゃんは骨格タイプ的に、華奢ね。でも下手すると、貧相にも見えちゃう。だから、それをカバーするようなエアリー感のあるお洋服を着てね。チュールスカートとか”

家を出る前に、鏡の前に立つ。そこに立つ自分は、ほんの少しだけ「東京」に近づけたような感じがした。

待ち合わせの『and people udagawa』に到着すると、既に何人かの同期が集まっていた。

「うわぁ、なんか美咲ちゃん今日違うね。髪の毛もなんか変わった?いつものかっちりしている感じが崩れた!いい感じじゃん!」

数人で固まって話していた女子たちが、美咲を見るなり口々にそう言った。

「ありがとう」

嬉しくて、笑みがこぼれる。さらには、同じテーブルだった同期の男子からも同じような反応が返ってきた。

「佐々木さんって私服だと全然違うね。今日来た時から、男子たちの間でいつもと違っていいねって話していたんだよ」

―アドバイスに従った途端、皆の反応が変わったわ。やっぱり玲奈さんってすごい!

さっそく玲奈にお礼を兼ねて報告しようと、鞄からスマートフォンを取り出す。

いくつか通知を知らせるメッセージが表示されている。一番上は、インスタグラムでフォローしている美容雑誌のアカウントから届いた「人気美容ライターのライブ配信開始メッセージ」であった。

いつものように指紋認証でロックを外そうとした時、たまたまそのメッセージをタップしてしまい、自動的にインスタライブへと誘導された。

すると画面には、想像もしないものが映し出されたのだ。

―え…これって!?玲奈さん?

なんとそこには、夏の最新美容情報を視聴者に向けて配信する、美しい玲奈の姿があった。

ーなぜ玲奈さんが、ライブ配信を?

スマホを見つめて固まっている美咲に気づいたのか、隣の同期がひょいと覗き込んでくる。

「あ、REINAじゃん!顔出し初めてじゃない?やっぱり実物も綺麗だったね。化粧品メーカー勤務だから当たり前なのかもしれないけれど、この人が発信する情報、ためになること多いんだよね」

「私も好きー!毎月、この人が書くコラム楽しみに読んでる!インフルエンサー的な感じだよね、もはや」

どうやら玲奈は、ただの「会社員」なだけではなかったようだ。

彼女には、自分の特技を活かして、広く人々に影響を与えるような別の顔があったのだ。

―好きな仕事が嵩じて、さらにいろんな人を幸せにしている玲奈さんは、本当にすごい。見た目が綺麗なだけじゃなくて、中身にも憧れちゃう…。

本当に美しい女性というのは、外見だけではない。見た目はやっぱり大事だけれど、それだけで終わりたくないと思った。

ー私もいつかは、玲奈さんみたいになってみたい。まずは、仕事でも早く1人前になれるように頑張らなきゃ!

玲奈から外見的なアドバイスのみならず、仕事に対する前向きな姿勢を学んだ美咲は、そう決意したのだった。

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「男の人に頼って生きる人生なんてつまらない」東京を生きるキャリア女子の価値観を知った美咲は…。