社説(7/14):GoToキャンペーン/感染拡大の今始めることか

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 新型コロナウイルス感染症の影響で観光が苦境に陥っている。何らかの公的なてこ入れは必要だろう。しかし、東京を中心に感染者が再び急増している今、全国的な観光キャンペーンを始める時期だろうか。感染を地方に広げることになりかねない。

 国土交通省が観光関連業界を支援する「Go To キャンペーン」の観光割引を今月22日に始める。国内旅行の半額相当を国が支援する。宿泊旅行は1泊当たり1人2万円、交通費がセットの日帰りは1万円を上限とする。

 支援は旅行代金の35%引きと、旅先の買い物や飲食に使える15%分のクーポンの組み合わせ。1人1泊2万円の場合、7000円の割引と3000円分のクーポンがもらえる。ただ、クーポンは準備が間に合わないため配布は9月以降で、当初は旅行割引だけになる。

 22日以降の旅行が対象。既に予約済みの分も後日、割引相当分を還元する。

 観光割引は当初、8月上旬開始を目指していたが、前倒しした。赤羽一嘉国交相は「多客期・繁忙期である夏休みが対象になるようにとの要望が強かった」と説明した。

 政府は感染防止と社会経済活動の両立を掲げる。しかし、感染が拡大しても「緊張感を持って」と呼び掛けるだけで、具体策を打ち出す動きを見せない。一方で、経済再開には前のめりな姿勢が目立つ。観光割引の前倒しもその流れにある。

 首都圏や関西など人口集積地を中心に感染者の増加に拍車が掛かっている。東京は12日まで4日連続で200人を超えた。この状況での旅行の奨励策は地方へ感染を拡散することにつながらないか。

 観光再開で地方のホテルや旅館は確かに潤うが、歓迎一辺倒ではない。

 宿泊客の感染が判明すれば、一時休業を強いられる可能性がある。風評被害も招きかねない。感染者の多い首都圏などの客を拒むことは現状では難しいだろう。

 軽井沢など有名観光地を抱える長野県の阿部守一知事は、東京の感染者が過去最多になった際「首都圏を(観光PRの)対象としないことも含めて検討する」と述べた。

 政府とは別に、自治体が独自に観光施策を講じている。宮城県は県民が県内に宿泊する旅行で1人当たり最大1泊5000円割引するキャンペーンを始めた。

 宮城は感染者が再び出始めているが、首都圏ほどではない。地元住民に限ることで安全性は保ちやすいはずだ。

 打撃を受けた経済を早く回復の軌道に乗せたいのは分かるが、危険性の低い施策から徐々に展開するのがあるべき姿だろう。

 欲張って感染の全国的拡大を招いたりすれば、取り返しがつかなくなる。少なくとも今月中は慎重に状況を見守る時期ではないか。