【7月14日付編集日記】クロマツの林

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 相馬市沿岸部の松川浦と外海を隔てる大洲道路は不思議な場所だった。砂浜のすぐ脇なのに、水平線が見える場所は少ない。車で走っていると、エンジンの音にかき消され、波の音もほとんど聞こえてこない。海のそばにいるのを忘れてしまいそうな道だった

 ▼海が見えない理由は、道の両側に植えられたマツの林。潮の害や海からの風を避ける防災林としての役割を果たしていた。林の中には公園もあり、憩いの場所として市民に親しまれていた。海辺のほうから見る白砂青松の眺めも美しかった

 ▼このマツの林が消えたのは、9年前の3月11日。当時、松川浦のそばから撮った写真を見ると、高さ10メートルはあっただろう林の上に波が見える。その数秒後の写真では林がなくなっている

 ▼林の再生に向けて行われていたクロマツを植える取り組みが、本年度いっぱいで終わる見通しとなった。2014年から始まった活動で植えたマツは約44万本で、広さは東京ドーム10個分に相当する約49ヘクタールに上る

 ▼市の担当者によると、マツが育ち、林が元のような姿に戻るには30年以上かかるという。消えてしまうのは一瞬でも、再生には長い時間が要る。その日が来るまであの景色を忘れずにいよう。