「生きていると信じたい」捜索見守る渡辺さん次男 湯平の一家3人不明【大分県】

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行方不明になっている両親の写真を見ながら思いを語る次男。一家は大分トリニータの応援が趣味で、仲良く観戦を楽しんでいたという=13日午前、由布市湯布院町湯平
花合野川で見つかった車両にブルーシートを掛け、大型クレーンで引き上げた=13日午後3時26分、由布市湯布院町下湯平

 両親と兄はどこにいるのか。豪雨で川に流されて行方不明となった由布市湯布院町湯平の一家3人は13日も見つからなかった。「生きていると信じたい」。家族の次男(24)=愛知県=は大分県警や消防の捜索を静かに見守っている。

 会社員の父渡辺知己(ともみ)さん(54)、旅館を切り盛りする母由美さん(51)と長男健太さん(28)は7日深夜に車で移動中、大分川支流の花合野(かごの)川に流されたとみられている。一緒にいた祖母の登志美(としみ)さん(81)は8日、約15キロ離れた大分川沿いの雑木林で、遺体で見つかった。

 「仲良し家族なんですよ」。次男のスマートフォンには、両親がサッカーJ1・大分トリニータのユニホームを着た写真が残っている。健太さんが撮影した。

 トリニータの応援は家族共通の趣味だった。旅館業の合間を縫い、スタジアムで観戦するのを楽しみにしていた。ユニホームは「自分が母の日、父の日にプレゼントした。喜んでくれた」。

 8日午前0時10分ごろ、「家族が流された」と叔父から知らせがあった。その約5時間前、由美さんと電話して「あまり雨は降ってないよ」と聞いていた。みんなの携帯電話にかけたが、つながらない。急いで実家に駆け付けた。

 「日頃から家族の防災意識は高かった」。6日に由美さんから「避難の準備をしているよ」と防災袋を撮影した写真が送られてきた。7日朝も庄内庁舎に身を寄せていたという。これまで避難の際は軽乗用車と乗用車の計2台に分乗。知己さんは1人で、健太さんは由美さんと登志美さん、愛犬を乗せて移動していた。

 今回も2台で避難していた可能性がある。「旅館の勝手口の鍵が開いたままで、鍵も残っていた。1階が浸水したことに気付き、バタバタと避難所に向かう途中だったのではないか」

 12日、旅館から約1.8キロ離れた同町下湯平の花合野川で、土砂に埋もれた軽乗用車が見つかった。13日午後に大型クレーンで引き上げたものの、中に人はおらず、周辺からも遺留品は確認されなかった。県警は渡辺さん一家の車の可能性があるとみて調べている。

 優しい父。人を思いやる母。「湯平に人を呼びたい」とツイッターなどで情報発信していた兄…。

 「皆さんの捜索は本当にありがたい。雨が続くので安全第一にしてほしい」。次男はスマートフォンを握り締めた。

 県内は豪雨で増水した川に流されるなどして5人が不明になっている。県警は13日までに延べ約490人を出して捜索。宗麟大橋(大分市下郡)近くの大分川や、日田市と福岡県うきは市にまたがる夜明ダムなど、それぞれ下流域に範囲を広げて活動している。