辛い人生を乗り越えて、前を向く女性たちの物語『赤い砂を蹴る』

朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。

今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『赤い砂を蹴る』

劇作家として活躍する石原燃のデビュー小説、新刊です。旅先のブラジルを舞台に、人生を前に進めようとする女性たちを力強く描きます。第163回芥川賞候補作。著者が作家・津島佑子の娘であり、太宰治の孫にあたることでも話題を呼んでいます。

赤い砂を蹴る
著者:石原燃
出版社:文藝春秋

ブラジルのミランドポリスという場所へ、女二人が旅をする。日本からずっと遠い場所で、それぞれ止まっていた人生から一歩前に踏み出すために——。

主人公の千夏と、画家の母・恭子の友人である芽衣子。ふたりの心のなかで、恭子も一緒に旅をしていた。ブラジルは芽衣子の出身地、そして恭子が生前、行きたいと切望していた場所でした。彼女たちのゆかりの地で、千夏は母に想いを馳せ、深く過去と向き合っていきます。

画家として自由にあるがままに生きた母。ある大きな悲しみに見舞われながらも恭子は自分の生き方を貫いた。そんな母に翻弄され、自分を見失っていた千夏。故郷に帰った芽衣子もまた、彼女の人生を静かに見つめています。

「母の絵から自分の姿が消えてしまったことに傷ついたこともあった。でも、いまはそんなに単純なことでもないと思う。だって私は生きているのだから」千夏も芽衣子も、過去と決別するのではなく、そっと折り合いをつけながら、前を向いて歩き出そうとしているように感じます。私は、母と娘の心をつなぐ役目を果たす芽衣子に魅かれました。

一度立ち止まって振り返るために、それから先へ進むために、人は旅をするのかもしれません。女性たちが「ザボン」を取りに行くシーンが生き生きとして美しい。濃い緑と黄色い果実。もし恭子がそこにいたなら、きっと絵を描いたのではないかと思った。母と娘、家族、女たちの物語をどうぞ。

ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ

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