32歳女性、結婚未定「親に保険を勧められるが入るべき?貯蓄の方針は大丈夫?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、32歳、会社員の女性。親御さんに保険を勧められているが、入るべきか迷っているとのこと。また、将来のための貯蓄のアドバイスも欲しいそうです。FPの鈴木さや子氏がお答えします。

32歳女性独身。結婚未定。飲食店勤務。

1)保険に未加入なのが気がかり。高額療養費制度があるので今一つ積極的になれない。

・貯金が貯まっているが、保険は必要か?

(親が保険に入れと言ってくるが、貯蓄額などは伝えていない)

・入るならどのようなものが良いか?

2)貯蓄の計画にアドバイスが欲しい。

・年間生活費は200万程度。特別な支出が年20万以下の見込み。この状態から、預貯金の400万の内もう100万を投資に回すか迷っているが、客観的に見てどうか?

今の預貯金は車用の資金に充てる可能性があるが、その目的で使用するのは少なくとも5年、長くて10年後と考えている。なのでインフレ等を考えると、貯金だけで10年運用するのは勿体ない気がする。(ただ、コロナの影響で、保有中の国内株式の評価が下落する可能性があるので、下落した際の追加費用として置いておくべきかとも思う)

・年間ではなく月間で見た場合、収入と支出(投資込)がギリギリあるいは赤字である。やはり問題か? その場合、積立貯金を諦めるべきか?どのようなバランスが良いか?

【現状について】

・資産運用として、iDeCo(年27.6万)、つみたてNISA(年40万)、車両費として積み立て貯金(目標月2万)を今年から始めた。コロナショックでボーナスが減ると予想しているので不安要素。

・投資を始めたばかり。今の資産は、預貯金400万、国内株式300万、投資信託(特定口座)150万。これと別に積立投資が、非課税口座で年額67.6万。(iDeCoは年4回の分割拠出)

・ふるさと納税をしており、昨年は4.3万ほど。ただし今年からiDeCo開始しており、かつボーナス減額が危惧されるので控除額が減りそう。

・今の車が9年目なので、遅くても10年前後で買い替える予定。その費用のため、メンテナンス費用込みで月2万ずつ積立するのが理想。しかし、既に投資が月あたり約5.6万なのでおそらく厳しい。投資とは別で貯金が400万あるので、ここからの支出も可能ではある。

以上です。よろしくお願い致します。

【相談者プロフィール】

・女性、32、未婚

・職業:会社員

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:21万円(ふるさと納税済)

・年間の世帯の手取りボーナス額:70万円

・毎月の世帯の支出の目安:15万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:5.8万円

・食費:4.5万円

・水道光熱費:1.1万円

・通信費:1.3万円

・車両費:1万円

・お小遣い:1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:2万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:70万円

・現在の貯蓄総額:400万円

・現在の投資総額:520万円

・現在の負債総額:0

・奨学金240万は完済。


鈴木: 自動車買換えを見込んだ計画的な貯金や、非課税投資制度を活用した積立投資など、お金に関する知識を得て、きちんと実行されている方と感じました。必要な保障やこれからの貯金計画について、お答えしますね。

医療保険の候補はシンプルで低コストなものを

保険未加入が気がかりとのことですが、おっしゃるように高額療養費制度によって保険診療による医療費は、ご相談者様の所得ですと月8~9万円までしかかかりません。とはいえ、高額療養費制度の対象にならない治療費や交通費、差額ベッド代、見舞客への返礼等にはお金がかかります。そのため貯金が全くない人は医療保険で備えると良いですが、ご相談者様は流動性のある資産が十分にあるため、特に必要ではないでしょう。

保険に入らないリスクがあるとすれば、貯金でまかなえない高額治療の選択肢がある際に選べないこと、また、治療が長引き予想以上にお金がかかったり、収入が減ったりして、貯金がみるみる減って不安になることなどがあげられます。

もし入院や手術をして、かかった費用を貯金から出すことになったときに、少しでも「保険に入っておけばよかった」と思うご自身が思い浮かぶならば、シンプルで低コストの保険に入っておくと気がかりは解消できますよ。

シンプルで低コストな保険ってどんなもの?

シンプルで低コストの代表商品は、共済です。共済の一例をあげると、年齢問わず59歳まで一律月2300円の掛金で、入院したら1日1万円(最大180日まで)、ケガによる通院をしたら1日2000円、放射線治療を受けたら1回6万円、先進医療を受けたら最大1000万円までの実費といったしっかりした保障を受けられます。ただし共済のデメリットは、60歳を超えると、保障内容が大きく減ることです。

民間の医療保険でも共済とそんなに変わらない保険料で備えられる商品もあります。治療費が高くなりやすいガンや三大疾病に保障を絞るのも良いですね。ガンや三大疾病と診断された時に受け取れる給付金はどんなことにも使えるので安心です。

ちなみに死亡保険については、現在独身とのことですので、亡くなった時に保障を遺したい人がいるのであれば要検討です。いなければ特に要らないでしょう。

5~10年以内に使う資金は「まもる」殖やし方で

現在の預貯金400万円のうち100万円を投資にまわすか迷っているとのことですが、この預貯金のうち大半を自動車にあてる予定であるならば、投資に回すのは得策ではないでしょう。5~10年以内に使う資金は、お金をできるだけ減らさずに「まもる」のが良いからです。

具体的な「まもる」商品としては、ネット銀行の高金利定期預金か個人向け国債が選択肢となるでしょう。新たな口座開設が面倒でなければ、都市銀行の定期預金の金利が0.02%であるのに対して、高いところは年利0.2%で預けられるところもあります。ただし10年満期の高金利定期預金はなかなかないので、短期のものに預けて都度判断することになります。

個人向け国債はインフレ対策に有効

個人向け国債は、半年ごとに利息を受け取るタイプの商品です。最低保証金利が0.05%なので、都市銀行の定期預金よりはよっぽど殖やせます。固定と変動タイプがありますが、10年後に満期を迎える変動タイプが良いでしょう。また世の中の金利変動に連動することが決まっているため、インフレ対策にもなります。

株式の保有銘柄の偏りに注意

少々気になったのは、始めたばかりとおっしゃる投資先です。現在、国内株式を300万円、投資信託を150万円、他はiDeCoとつみたてNISAを積立てされていますね。投資信託や積立投資の銘柄がわかりませんが、投資先は国内株式に偏っていないでしょうか。今後はコロナウイルスの影響もあり、株式によっては大きく落ち込むこともあり得るでしょう。どんな株式を保有しているか不明ですが、買い増しがその後凶と出ることも。現在の資産の半分以上がリスク資産なので、しばらくは買い増しせずに、預貯金を増やしていくのがよいと考えます。

収支がトントンでも生活に満足しているなら大丈夫

毎月の投資と自動車のための積立を合わせると7.6万円。収入21万円の4割近くを占めています。貯金や投資にまわした結果、トントンになることは全く問題ないのですが、心配なのは、残ったお金で生活することに窮屈や不便を感じていないかということ。使い道を見ると、娯楽費や被服費がないのが気にかかりました。貯金や投資は「未来」への備えですが、「現在」の人生も同じように大切なものです。もし少しでも「もう少し余裕があったらいいなあ」と思うのであれば、積立投資を満額までせずに、下げる方がいいでしょう。もし今の生活で満足であれば、トントンでまずいということはないですよ。

金額を下げるならば、iDeCoには所得控除の効果があるため、つみたてNISAの金額で調整することをおススメします。もしくは、課税口座の投資信託の一部(例えば60万円分など)を売却してつみたてNISA口座に入れて、毎月の収入から出ていく金額を減らす方法もあります。

何かあった時にすぐに引き出せる流動性の資産があり、将来のための備えもしているのならば、残ったお金をどんな風に使っても大丈夫。「今」の人生を楽しむことにもお金を使い、リスク資産が増えすぎないように気を付けながら、この調子で資産形成を続けてくださいね。

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