IDC、DXを支える「デジタル人材」は技術的スキルよりもコミュニケーションスキルや企画力を重要視すると発表

IDC Japan株式会社は、DXを支える人材「デジタル人材」に関する調査結果を発表した。DXを支えるデジタル人材にとって必要とされるスキルとしては、DXを実現するためのAI、ビッグデータ、クラウドといった技術的なスキル(ハードスキル)と、関係部門や社外とのコミュニケーションスキル、業務変革やビジネス創造を企画する能力/スキル(ソフトスキル)の2つがある。IDCでは、DXを実践している企業、DXの実験段階にある企業、DX実施の検討を行っている企業に対してアンケート調査を行い、これら2つのスキルのうちどちらがより重要かという質問をしたところ、全体としては「ソフトスキルの方がより重要(46.0%)」という結果となった(「ハードスキルの方が重要」は24.3%)。また、これらのスキル取得の方法としては、ハードスキルでは社内外の研修受講やDXのパートナーであるITサプライヤーによる協力などが上位に挙がった一方、ソフトスキルでは社内外の研修受講の回答割合は高かったものの、ITサプライヤーに協力を求めるケースは比較的少ない結果となった。デジタル人材育成におけるITサプライヤーの役割は、企業が必要とするスキルによって異なるようだ。ただし、今回の調査結果を「DXの長期的なロードマップを持っているか」「そのロードマップは経営計画と一体化しているか」という観点から4つの回答者グループに分けて再集計すると、異なる風景がみえてくる。4つのグループのうち、DXをもっとも全社戦略の観点から実施していると考えられる「経営戦略/計画と一体化したDXロードマップを持っている」企業グループでは、DX人材育成において「ハードスキルの方がより重要」の回答率(32.4%)が「ソフトスキルの方がより重要」のそれ(29.4%)を若干上回り、全体の傾向とは異なる結果となった。全社戦略的にDXを進めようとする企業はソフトスキルを軽視しているわけではなく、技術とビジネスのバランスの取れたスキル強化を行おうとしているものとみられる。また、ハードスキルの中で重要視するスキルを見ると「内製化」につながる領域が他に比べて多く、技術的なスキルを社内に蓄積し、内製化されたデジタルアプリケーションを提供することで、差別化を図ろうという意図が見える。さらに、当該企業グループでは、人材育成方法においてもITサプライヤーを含む外部リソースの活用を積極的に行ったり、DX組織のリーダー層から担当層まで外部人材を登用したりといった傾向がみられた。デジタル人材は、組織内の業務変革や新規ビジネスの創出をリードする役割を担っているため、外部からの新しい見方を取り入れたり、新たな技術を学んだりと、その育成には様々な施策が必要である。企業は、それを個人の自助努力に任せるのではなく、DX同様、組織的、戦略的に進めていく必要がある。IDC Japanのリサーチバイスプレジデントである寄藤幸治氏は「ITバイヤーは、中期的なデジタル人材育成のロードマップを、DX計画、経営計画とともに策定すべきである。また、技術的なスキル、ハードスキルの社内蓄積の必要性を再認識し、それらを活用した差別化を行うべきである」と分析している。

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