「すっかり老け込んでかわいそう…」27歳独身女が出産した友人に浴びせた、ありえない一言

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美は、お金をかければかけるほど育つ。

美容皮膚科に、ネイルサロン。それからサプリメント…。いくらあったって足りないの。

誰もがうっとりするような、手入れの行き届いた美貌。

ーそれさえあれば、魔法みたいに全てが上手くいくんだから。

そう信じて美に人生を捧げてきた27歳OL・ユリカの物語。

◆これまでのあらすじ

彼氏・祐太との連絡が途絶え、悶々としていたユリカ。思い切って祐太のオフィスまで行き待ち伏せをしたが、祐太に「付き合いきれない」とキッパリ振られてしまう。

ちょうどその時、大学時代の親友である智美から連絡が来て…。

▶前回:「一夜を共にしたときから違和感が…」絶世の美女が彼氏にフラれた、まさかの理由

Tomomi:先にお店入ったよ(^^)

待ち合わせ時間の5分前。ユリカの携帯に智美からLINEが入った。今日はお台場で、大学時代の親友・智美と会うことになっている。

2人は卒業してからも毎年一度は必ず会っていた。

しかし去年は智美が出産し、バタバタしていて会えなかった。だから今日は2年ぶりの再会だ。

梅雨の合間のよく晴れた休日。日傘を畳んで、ユリカは待ち合わせ場所のレストランに入った。

グルリとあたりを見回して、智美の姿を探す。

すでに店内にいるはずなのに、それらしき人物がパッと見当たらない。ユリカが困っていると、奥の方の席で智美が手を上げた。

「ユリカー!久しぶり!」

「…あ、智美!」

そこには、たった2年しか会っていなかったとは思えないほど“変化”した姿の智美がいた。

ユリカはぎこちなく笑いながら、智美の座る席に向かう。他愛もない挨拶を交わす間、ユリカは智美の姿をまじまじと見てしまった。

ペタンコでヒールのないサンダルに、体型を隠すようなチュニック。いつも綺麗に手入れされていたネイルもまつエクもついていない。

―智美…。すっかりおばさんだなあ。

子育て中の親友を見たユリカが、放った一言

智美の姿を見た瞬間、ユリカは大学時代のことがふとよみがえってきた。

ユリカと智美は、互いに競うくらいの美貌の持ち主だった。キャンパス内に2人がいると特に目立ったし、男子学生たちが遠慮ない視線を浴びせてくることにも、慣れきっていた。

そんな風に大学生活を謳歌していた2人だったが、3年生に進級する頃になると、智美は真面目に就活するようになる。

「ねえ、ユリカは進路どうするの?」

カフェテラスでランチをしていると、智美が唐突に尋ねてきた。

「うーん。今考え中」

「考え中って。そろそろインターンとか行かないと!なんかないの?やりたいこと」

「ええ…?定時に帰れて、都心の会社ならどこでも良いかな。クリニックがたくさんある銀座とか青山の近くで探す」

それを聞いて、智美は小さくため息をついた。

「ユリカさあ、バイト探しじゃないんだから」

大学時代から、ユリカは美容に凝っていた。知り合った社会人からお金をもらっては、ハタチそこそこからクリニックに足繁く通っていたのだ。

そんなユリカは智美を見つめながら聞く。

「智美は、やっぱりCA目指すの?」

「そうだよ」

智美は美しい脚を組み直してニッコリと笑った。その笑顔をかき消すように、ユリカは首を横に振る。

「やめときなよ。CAはハードだよ。華やかなのは側面だけで、時差のせいで肌も荒れるし、立ちっぱなしで足も浮腫むらしいし」

聞こえないフリをして外の景色を見ている智美に向かって、ユリカは続けた。

「智美、綺麗なんだからさ。変に忙しい仕事して老けるより、見た目をキープする方が絶対いいわよ」

そんなことを思い返していたユリカは、目の前の智美に心の中で言った。

―ほら、私の忠告通りじゃない。あんなに綺麗だったのに、普通の人になっちゃった。

智美は大学4年の時、希望通り大手航空会社のCAという狭き門を突破し、内定をもらった。社会人になってから2人がかつてのような距離感で付き合えなくなっていったのは、自然なことだった。

特に智美が3年前に結婚し、子どもを産んでからは尚更会いにくくなっている。

メニューを開き食事を注文すると、智美はユリカを見て目を細めた。

「で、最近どう?相変わらずすっごい綺麗ね」

「えへへ、ありがと。…あ、そうだ。ちょっと聞いてよ!」

それをきっかけに、ユリカは祐太への愚痴をこぼし始めた。祐太との出会いからサプライズ旅行を断った件、そして先週正式にフラれた話を、ユリカは智美にぶちまけた。

「…ってワケなの。勝手じゃない?」

ユリカが話し終えると同時に、料理が運ばれてきた。

智美は、クリームパスタが自分の前に置かれるのを待ってから、口を開く。

「あのさ、ユリカ。私たちもうすぐ30になるんだよ?ちょっと美容にとらわれすぎなんじゃないかな。そのままじゃ、いつまで経っても中身空っぽのまんまだよ」

ユリカは、拍子抜けした。女性なら皆「祐太の言葉もおかしい!」と共感してくれるとばかり思っていたのだ。

口をぽかんと開けたユリカに、智美は説教じみた調子で続ける。

「ユリカは大学の頃からあんまり変わってない。見た目が変わらないのはすごいことだけど、中身もだよ。私、ちょっと心配になる」

「…心配?」

ユリカはサラダをつつきながら、上目遣いで智美の表情を確認する。智美はパスタを食べる手を止めて、まっすぐユリカを見ていた。

「私は客室乗務員をやって、本当にいろんな勉強をしたの。それから、結婚して子どもも生まれた。幸せで充実した20代よ。でもユリカの20代は美容だけで終わっちゃいそうで。なんというか…」

「…なんというか?」

「見ていて、かわいそう。…ごめん、気を悪くしたら」

智美の「かわいそう」という言葉に、ユリカは…

ユリカの脳内は、完全に混乱していた。

―え?どっちかっていうと、かわいそうなのって智美じゃない?

ユリカは、智美の風貌を見て思う。

「手入れできないから切っちゃった」と言っていた、肩につかないくらいの少し乱れた髪。そして腕にはうっすらと毛が生えているのが見える。

―昔はあんなに抜かりなく処理してたのに!こんな風に所帯じみるのなんて、私は絶対イヤ!

そう心の中で叫ぶユリカをよそに、智美は遠慮がちに話を続けた。

「ユリカからは、仕事の話も聞かないしさ。仕事って、やると面白いよ?私は子育てもあるから、これからは客室乗務員じゃなくて本社の仕事に切り替える予定だけどね」

智美は「本社でも、やってみたいことがたくさんあるもん」とイキイキ語り、美味しそうにパスタを頬張る。

その口元をうっすらと囲む、ほうれい線。ユリカはそれが気になって仕方がない。

「ねえ智美…。私の行きつけの美容皮膚科、紹介しようか?私の紹介なら結構安く受けれるよ?」

「…え?」

完全に噛み合っていない会話。微妙な空気になっていることに構わず、智美を諭すようにユリカは言った。

「ねえ、智美。なんかもったいないよ。元はすごく綺麗なのに」

その言葉で、智美の眉間にシワが寄る。ユリカにも失礼なことを言っている自覚はあった。それでも、目の前の智美をどうにか救ってあげたいと思ったのだ。

しかし、智美は真顔で首を横に振った。

「…私はね、自分にかける時間が全然ないの。でもそれって幸せなことなのよ、すっごく。だから大丈夫。あ、パスタ伸びちゃうね」

気まずい雰囲気を流すように智美はニコリと笑うと、パスタをくるくるとフォークに巻きつける。

そのあとも、お互いの近況をポツポツと話した。しかし食事を終えた瞬間、智美は「じゃあ、出ようか」と席を立ってしまった。

レストランを出ると、休日の賑やかな雰囲気が街に満ちていた。

「久々に夫が娘見てくれるから、今日は羽伸ばしちゃおうかな」

今朝はLINEでそう言っていたのに、智美はショッピングに誘うこともなく「じゃあ、私こっちだから」と駅の方向を指差す。

そして、ユリカの目を見て言った。

「私みたいになれないなら、ユリカはまだ恋愛で揉めてた方がいいよ。子育てなんて、今のユリカには絶対できないから」

そう言うと短い髪を揺らしながら、智美は足早に去っていった。

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ユリカがここまで美容にこだわるワケ