次世代の投手陣結成と連覇へのカギ…楽天と巨人のトレードにあるメリットは

交換トレードが発表された巨人・高田萌生(左)と楽天・高梨雄平【写真:荒川祐史】

高田は松井や釜田、藤平らと将来魅惑のローテへ、高梨は優勝へのブルペン整備

巨人・高田萌生投手と楽天・高梨雄平投手の交換トレードが成立し、発表となった。両者とも人気が高く、高田はドラフト5位で入団した際は「将来のエース候補」と言われ、期待された。どちらかというと寡黙なタイプ。高梨はチームを支える左の貴重なセットアッパーでありながら、SNSでも料理や加工アプリで写真を投稿し、ファンとの交流を楽しむなど、明るいキャラクターとして親しまれた。タイプの違う投手が今後、どのようにチームの力になっていくのだろうか。

双方がメリットを感じて、成立したトレード。現時点でどちらが得か損かなんてはわからない。

高田は西武・松坂大輔投手を敬愛し、フォームをマネていたため「松坂2世」と称された。150キロを超えるスピードボールを武器に、巨人入団後も着実に力を付け、まだ1軍未勝利だが、先発も中継ぎも経験した。ファームでは安定した成績を残しており、昨年は20登板で6勝6敗、防護率2.99で規定投球回にも達した。

近い将来、ローテーション投手になり得る存在だ。入団時から高卒同期入団の大江竜聖投手とともに強化選手として鍛えられ、多くの名投手を送り出した名伯楽・小谷正勝投手コーチ(当時)も楽しみな存在として期待していた逸材。まずはファームで実戦を積むことが予想されるが、移籍先には楽天の将来を担う若手が揃っている。彼らの刺激にもなり、チーム力の底上げにつながる。

2016年のドラフト1位の藤平尚真投手とは同学年。楽天には26歳の釜田、23歳の安楽、22歳の藤平ら若い投手が揃う。24歳の左腕・松井らも含め、順調に行けば、次世代の楽天を背負っていく強力投手陣が形成されることになりそうだ。岸や則本昂、涌井といった経験豊富な右腕たちもそろっており、好影響を及ぼすだろう。

中継ぎ強化が急務の巨人、明るい高梨がブルペンを盛り上げる

高梨は2016年にドラフト9位で指名されながらも、1年目から46試合、70試合、48試合とブルペンを支えた。トレードが決まり「箸にも棒にもかからない選手を獲ってもらって、たくさん投げさせてもらった濃い3年半でした」と社会人からプロ入りのチャンスをもらった球団に感謝した。ウィーラーに続いての巨人移籍となった。

今季の楽天は中継ぎ陣が厚く、高梨は今季1軍登板はなし。ウィーラーと同様、出場機会がなかっため、活躍の場のあるチームへのトレードとなった。巨人はセで開幕から首位争いをしているが、投手陣は安定した成績は残せていない。左腕は開幕から高木がハイペースで登板。守護神のデラロサが左脇腹肉離れで離脱しているため、セットアッパー左腕の中川が“抑え役”としての負担も大きくなる。同じ左腕の藤岡に加え、高梨が加わることで高木や中川の負担軽減にもつながる。今季のような過密日程で勝ち抜くことを見据えた補強と言える。

グラウンド外での“活躍”も多岐に渡る。高梨は新型コロナウイルスの感染拡大でチームが活動休止の中、個人のツイッターやYouTubeチャンネルで料理を披露。それもかなり本格的に「たかなしきっちん」としてファンに公開。明るい性格で周囲から愛され、SNS上では気持ちの整理がつかないファンもいたほどだ。巨人にとって、ブランド力アップの戦力にもなる。

両球団間のトレードは3週間で2度目。連続でのトレード実現は球界の活性化、選手の未来を考えてのこと。大きなメリットをもたらすトレードになることを期待したい。(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2