「これ以上何をどうすれば…」 相次ぐ感染、飲食業界は客足逆戻り懸念

手すりを消毒する従業員=長崎市、割烹ひぐち浦上店

 長崎市内の病院で相次いだ新型コロナウイルス感染では、感染者らが複数の飲食店を利用していた。自主休業した店は、感染予防策を強化して営業を再開。自粛ムードが緩み、客足がようやく戻りつつある市内の飲食業界に困惑が広がっている。
 岩川町の割烹(かっぽう)ひぐち浦上店には5日、感染した長崎みなとメディカルセンターの20代男性医療職と40代男性会社員が来店した。既に席を半減し客同士の間隔を確保、営業中も消毒や掃除を繰り返していた。2人への接客時間も短かった。このため市保健所は、他の客やスタッフに濃厚接触者はいないと判断した。
 それでも13日に休業し、専門業者が店内を消毒。翌14日、通常営業に戻した。店長は「結果として感染拡大に至らずよかった」。保健所のアドバイスで、手すりやドアノブなど大勢が触れる場所を拭く頻度を一層増やす。
 「緊急事態宣言の解除後、ちょっとずつ客足が戻ってきたのに逆戻りしたら…」。江戸町の飲食店オーナー(64)は同センターの集団感染を不安げに見守る。消毒やマスク着用など予防に努めているが、「これ以上何をどうすればいいのか」と困惑を隠せない。
 出島町の中国料理「Red Lantern」は3密を避けるため、客をなるべくテラス席に案内。店内も8人席を4人で使ってもらう。使用済みのおしぼりを片付けたスタッフはその都度、手指消毒。オーナーの譚真(たんしん)さん(46)は「できることを徹底していく」。
 対照的に、万屋町の飲食店オーナーの言葉には半ば諦めがにじむ。「席を減らせば客のニーズに応えられず、売り上げにも響く。『感染した客は来ない』と信じるしかない」
 14日に3人目の感染が判明した長崎大学病院に近い飲食店の店主(41)は「感染者がここにも立ち寄っているかも」と身構える。一方、ある居酒屋は同病院の1人目が確認された直後から団体予約がすべてキャンセルになったが、店主(41)は「今まで長崎で広がっていないのが不思議だった」と冷静に受け止めた。
 同じく近くの焼き鳥店の従業員はフェースガードも着用。代表(46)は「危険な街というイメージがついてほしくない」と祈る。今後は来店客に記名を求めることも検討するという。


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