ヨーク大竹正人社長が語るセブン&アイの首都圏SM戦略と鍵握る3つのフォーマット

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6月1日、セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下、セブン&アイ)の完全子会社であるヨークマートが商号変更し、新会社ヨーク(東京都)が発足した。イトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)の都市型食品スーパー(SM)「食品館」をはじめ、首都圏で展開するSMやディスカウントストア(DS)を傘下に統合させて、セブン&アイの「首都圏食品戦略」を推進させる。その成長戦略をヨークの大竹正人社長に聞いた。

立地に応じた店舗展開でディスカウント型SMにも対抗!

おおたけ・まさと●1959年生まれ。福島県出身。81年青山学院大学経営学部卒業、ヨークベニマル入社。2004年執行役員。06年ライフフーズ取締役。12年セブン&アイ・ホールディングスグループMD改革プロジェクトリーダー。14年ヨークマート代表取締役社長。20年6月から現職。

──ヨークが発足し、セブン&アイの「首都圏食品戦略」が大きく動き出しました。現在の商環境をどのように見ていますか。

大竹 ヨークが店舗展開する首都圏は肥沃なマーケットが広がることから、競争環境は非常に厳しいです。当社の前身であるヨークマートの2020年2月期売上高も1429億円(対前期比98%)、営業利益は7億円(同42%)と伸び悩んでいます。

競合他社のなかでも強さが際立っているのが、オーケー(神奈川県)さんやロピア(神奈川県)さんといったディスカウント型SMです。競争に勝ち残っていくには、これらの企業に対抗できる強みが必要でしょう。

──具体的にいかに競合他社に対抗していくのでしょうか。

大竹 ヨークマートは17年度から、来店動機を創出するための新規MDの構築に力を注いできました。この新規MDを進化させ、またイトーヨーカ堂から承継した「食品館」とDS「ザ・プライス」に融合させることで、新たなフォーマットができつつあります。これを一つひとつ磨き上げ、立地によって使いわけて店舗展開することで競合他社に対抗していきたいと考えています。

──新たなフォーマットとはどのようなものですか。

大竹 標準型、小型、DS対抗型があります。まず標準型は、新規MDを導入し、鮮度感や快適な買物の提供に力を注ぐフォーマットで、最近の成功例に「ヨークマート小豆沢店」(東京都板橋区)があります。同店は18年3月、セブン&アイのショッピングセンター「セブンタウン小豆沢」内の「食品館」の撤退跡に出店した店舗です。新規MDとして、店内加工の魚総菜やサラダ、スイーツといった付加価値の高い商品や、インストアベーカリーなどを導入した結果、18年4~12月の売上高は対前年同期比141%と大きく伸長しました。最近では週末には全店で売上がナンバーワンになる日もあるほど成長を続けています。

──小豆沢店は「食品館」時代は業績が振るわなかったわけですが、「食品館」の課題はどこにあったのでしょうか。

大竹 総合スーパーを主力とするイトーヨーカ堂では、「食品館」は規模的に小型店の扱いとなってしまい、十分な人員を充てることができていませんでした。

そこで「ヨークマート」に転換後は、最初は利益率を削ってでも人員を投入して“めざすべき売場”を実現させることを優先し、売上高を伸ばした後、効率性を高めていきました。その結果、小豆沢店は20年2月期には利益も稼げる店となり、今では人時売上高も約1万6000円まで向上しています。

──5月13日には、標準型フォーマットの最新店で、新屋号を掲げた1号店「ヨークフーズちはら台店」(千葉県市原市)を開業しました。利用動向はいかがですか。

大竹 非常に好調です。開業に当たっては、新型コロナウイルス感染症が拡大するなか店内の混雑を避けるべく、オープン日のチラシ枚数を約5000枚に抑え、かつ価格も掲載しませんでした。

それにもかかわらず、新規MDを中心に支持を得て、1人当たり買い上げ点数は「ヨークマート」平均が11点であるのに対し、同店は13点と高く推移しています。

今後ちはら台店の成功例を、既存の「ヨークマート」にも改装のタイミングで導入し、屋号も「ヨークフーズ」に転換していく計画です。

首都圏のSMを束ねることとなったヨークは、各SMの強さを融合した新たなフォーマットの確立を進める。写真は標準型の最新店「ヨークフーズちはら台店」

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「ザ・プライス」の要素を生かしたDS対抗型に期待

──都市部での成長のカギとなる、小型フォーマットについてはいかがですか。

大竹 19年7月に改装した、売場面積約250坪の「ヨークマート中町店」(東京都世田谷区)が今後のモデル店になると考えています。リニューアルでは、都市部の需要を見込み簡便商品を強化したほか、小型でも快適な買物環境や、鮮度感・出来たて感を訴求できる店づくりを実践しました。その結果、同店もお客さまから高い支持を得ています。この小型フォーマットの運営ノウハウは、都市部立地の店舗が多い「食品館」の活性化にも生かせるでしょう。

「食品館」については、6月に全店の屋号を「ヨークフーズ」に転換し、品揃えを改良しました。なかでも「新宿富久店」(東京都新宿区)は、今回の改装で最新の新規MDを導入しており、成功例をほかの転換店にも波及させる方針です。

──3つめのDS対抗型はどのようなフォーマットですか。

大竹 「ヨークマート」が強みとする生鮮・総菜に、イトーヨーカ堂のDS「ザ・プライス」の商品や売場づくりを取り入れたフォーマットです。「ザ・プライス」の驚くほど低価格な商品を売場の一部に組み込むことで、価格訴求を強めるとともに、宝探しをするような楽しさも提供できる店をめざしています。

同フォーマットを改装により19年8月に「食品館(現ヨークフーズ)梅島店」(東京都足立区)に、19年10月に「ヨークマート川崎野川店」(神奈川県川崎市)に導入したところ、ともに近隣にオーケーさんをはじめ価格訴求力の高い競合店があるにもかかわらず、売上高が向上しました。

次世代を担うフォーマットになると大きな期待を寄せており、価格競争の激しいエリアでこのフォーマットを展開していきます。

──「ヨークフーズ」や近年の「ヨークマート」の店舗では、ヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)の商品や売場づくりを多く取り入れています。

新規MDでは、店内加工の魚総菜やサラダ、スイーツといった付加価値の高い商品の開発に力を注いでいる

大竹 はい。グループで連携した取り組みとして、ヨークベニマル子会社のライフフーズ(福島県/松崎久美社長)が製造する、冷総菜やレンジアップ商品の供給を受けています。

最近では、ミールキット開発でも連携していて、ちはら台店で導入した、本格的な味が楽しめるパエリアやあんかけ焼きそばのキットは手ごたえを得ています。

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年間2~3店舗の新規出店目標を加速へ

──今後ヨークでは、プロセスセンター(PC)やセントラルキッチン(CK)を導入して、製・配・販一体型のMDを構築し生産性向上を図る方針も打ち出しています。

大竹 セブン&アイのグループ商品戦略本部長の石橋誠一郎氏がヨークの取締役に就き、グループで共通化させることと、ヨーク単体で進めることを精査しています。私自身はPCやCKは共有する一方、物流は単独で行うほうがよいと考えています。高い商品・サービス力の実現も追求しながらグループ力により生産性を向上させ、ヨークが24年度までの目標に掲げている、営業利益率3%の達成を実現します。

──今回の事業統合で、セブン&アイが実験的に営業していた都市型SMの新業態「コンフォートマーケット」(1店舗)もヨークの傘下に入りました。

大竹 150坪の小型店である「コンフォートマーケット」は、これまでセブン&アイグループのなかで単独で事業を展開してきました。生産性を向上させるために、まずは店舗運営のシステムから改善していく方針です。

現在は休業に至っていますが、実験的な取り組みのなかには、ミールキットをはじめ成功例も実は結構あります。今後は当社の新規MDを組み合わせて利益が出せるフォーマットに育成していきます。それが実現すればより小商圏の立地へも出店が可能になるでしょう。

──新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けるなか、21年2月期の業績をどのように見込んでいますか。

大竹 見通しが立てにくい状況ですが、第1四半期の売上高は対前期比で2ケタ伸長を遂げています。人々のライフスタイルが大きく変わって「内食」化が進んだことで、SMの価値が見直されていると感じています。この傾向はしばらく続くと考えており、今期の業績は計画を上回ると想定しています。

──今後の「ヨークマート」の「ヨークフーズ」への改装と、新規出店の計画を教えてください。

大竹 改装については、人手が追いつくようであれば下期だけでも10店近く実施したいです。

新規出店については、年間2~3店舗を目標に据えていますが、できればペースを加速させたいですね。営業利益率が向上していけば、物件を獲得するための資金も捻出可能になりますし、複数のフォーマットを生かすことで、さまざまな立地に対応できると考えています。

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