初投資で70万の損失!「何がいけなかった?」FPが教える投資をしていい人・ダメな人

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、45歳、会社員の男性。人から勧められて投資をしてみたところ、70万の損失を出してしまいました。なんとか取り戻したいと言いますが…。家計再生コンサルタントの横山光昭氏がお答えします。

会社員です。4年ほど前、上司に勧められて投資を始めました。単に儲けたいというのではなく、老後資金を作る目的でした。投資初心者なのですが、マネー雑誌の記事で「個別株」「アクティブファンド」が載っており、私はよく理解せずにそれらに投資していました。まず投資に関してはその点が不安だったのです。

投資の資金は子どもの教育費や、妻と私の老後資金にしたいと思って貯めていた貯金からやっています。ですからゆっくりと、でもしっかりと増やしたかったのですが、評価額が激しく上下するので、なんだか気持ちの面で辛くなりました。そのうちゼロとまではいかなくても投資した額の半分以下などになってしまうのではないかと不安が強くなり、売却して手放していました。結果、70万円の損失。とても痛いです。

我が家は私が家計管理をしているので、この損失について、妻はまだ知りません。何とか少しでも取り戻し、妻を不安にさせないよう挽回したいです。どのように投資をするとよいのか、教えてください。

【相談者プロフィール】

男性、45歳、会社員

同居の家族:妻(42歳、専業主婦)、長男(小5)・次男(小3)

手取り月収:36.7万円

年間の手取りボーナス:約100万円

貯蓄:60万円 (投資商品売却後)

【支出状況(支出総額:37万円)】

住居費:10.4万円(家賃)

食費:7.6万円

水道光熱費:2.8万円

通信費:1.1万円

生命保険料:1.9万円

日用品代:0.8万円

教育費:1.5万円

被服費:1万円

こづかい: 4万円(夫のみ)

その他:5.9万円


横山: 一口に投資と言っても、投資への取り組み方はさまざまです。まして商品選びなども、初めのうちはよく分からないのは普通です。

相談内容から、相談者さんには「個別株」「アクティブファンド」は適さないやり方だったのかなと感じました。「将来を見据えての資産形成」「あまりドキドキしない方がいい」「リスクを大きくとってリターンを得たいわけでもない」「2〜3年の短期間で増えなくてもいい」などのスタンスに思いますので、そのような場合は、個別株やアクティブファンドではなく、投資信託でインデックスファンド(パッシブ運用)を用いた、いわゆる「長期・分散・積立」の投資スタンスが良いように思います。投資初心者向きでもあります。

投資を始める心構え

もちろんインデックスファンドといえど、そのベースとなる指標はマーケットと連動を目指すものですので、今回のコロナのような経済ショックが起きれば、評価上の影響はあります。ただ、長期的視点で、コストを意識して、強固な家計からの原資で行われるのであれば、越えられる取り組み方だと私は思います。

始めるには、学ぶことが必要ですが、理解できるところのもので精神的にも金銭的にも無理なく続けられそうなものを選んでください。始めるといろいろなことも見え始め、理解されることも多くなるでしょう。習うより慣れろの精神とのバランスが大事です。

投資を始める前に、家計の赤字改善・黒字維持に

投資のやり方うんぬんの話をする前に、毎月の家計が赤字になっています。赤字が影響しているのか、貯金も十分あるとは言えません。ご事情によりそれでも仕方がない場合もありますが、収入から考えると、もっと貯金ができていてもよかったのではないかと思わされます。貯金を増やしていくためにも、まずは赤字の改善から考えなくてはいけません。支出全体を把握し、ムダな支出がないかを振り返ってみましょう。

見たところ、通信費は利用の仕方により、契約プランの見直しで削減効果が出る可能性があると思えます。食費も食材の購入の仕方の変更や1週間の予算管理をしてみるなどで、改善の余地がありそうです。被服費やその他の費目に振り分けている支出も見直し、ムダ支出を省いて家計を黒字化することを目指しましょう。

投資について考えるのは、それからです。

生活防衛資金の目安

家計が黒字化できたら、次は貯金を作ります。投資を始めるにはいくら貯金を持てばよいでしょうか。サラリーマンであれば最低限月の生活費の7.5か月分、自営業であれば最低限1年分です。いわば緊急資金のため、それ以上あっても構いません(ありすぎはどうかと思いますが)。

7.5か月分のうち、1.5か月分が「使う貯金」です。生活費で使って減り、給料日に増えるものです。0.5か月分余分に設定するのは、イレギュラー支出に対応するためのバッファです。

残り6か月分以上は「貯める貯金」となります。いわゆる生活防衛資金の意味があり、簡単に使うことはありません。今年のコロナ騒動などにより現金が必要だと感じた人も多かったので、6か月とは言わず、1年分でも、2年分でも構いませんが、多すぎるとなかなか次に進めないので、ほどほどに。5年以内に必要になる教育費や住宅の頭金、マイカー資金などがあるなら、それはこの生活防衛資金とは別に貯める必要があります。

この「貯める貯金」ができたら、それ以外のしばらく使わないお金で投資を始めて良い段階に入ります。ただ、この段階にたどり着くまでにかなりの時間がかかるという人もいます。その場合は、貯金を中心にしながら一部を投資に回す「貯金と投資の並走」をさせることも1つの手段です。時間を味方につけた投資ができるメリットがあります。

投資は「長期」「分散」「積立」で

前述しましたが、投資は「長期」「分散」「積立」を基本としましょう。初心者で、しかも老後資金が目的の投資であれば、インデックスファンドを積み立てる投資をお勧めします。日本で言えば日経平均とかTOPIXなどの指標に連動することを目指している商品なのでわかりやすいですし、リスク(不確実性)も少ないからです。複利を期待してコツコツ積み立てる投資からはじめ、違うものもやってみたいのであれば、投資を知ってから一部で個別株やアクティブファンドに挑戦してみるとよいですね。

相談者さんは今回のような投資をして、耐えきれずにマイナスになってしまったのですから、投資法が合っていなかったのだと言えます。「これはランキングに入っていた商品だ、誰かがよいものだと言っていた」と飛びつくのは、よくありません。その前に、それはどういう商品なのか? 自分の投資スタイルに合うのだろうか? など、投資で資産形成をする際には十分に検討したいものです。慌てず、少しずつでも調べ、学んでみてください。

訳も分からず投資を始めるよりも、家計状況を整え、勉強しながらゆっくり取り組める投資の仕方をすると、失敗はかなり少ないでしょう。相談者さんはまず、生活防衛資金作りからです。

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