社説[藤井七段初タイトル]17歳の快挙おめでとう

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 注目の高校生棋士が、将棋界の記録をまた一つ塗り替えた。

 藤井聡太七段(17)が、棋聖戦5番勝負で渡辺明棋聖(36)を破り、17歳11カ月で棋聖位の称号を獲得した。プロ棋士にとって最大の栄誉であるタイトルを史上最年少でつかむ、というひときわ輝かしい記録だ。

 これまでの最年少記録だった屋敷伸之九段(48)の18歳6カ月を、30年ぶりに更新した。

 和服姿で臨んだ大舞台の第4局。対局は難しい形勢が続いたが、終盤の素早い攻めで優勢に立った。

 勝利を決めた後、「責任ある立場になる。これからも楽しんで見ていただけるよう、精進していい将棋を指していきたい」と静かに喜びをかみしめた。

 デビュー以来、一挙手一投足が報じられるなどブームを巻き起こし、他の棋士から常に注意を向けられる中での快挙だ。この快進撃がどこまで続くか楽しみでならない。

 それにしても目覚ましい活躍だ。

 2016年10月に最年少の14歳2カ月でプロ入りし、デビューから29連勝を果たし話題になった。17年度には勝率、勝利数、対局数、連勝の全4部門で1位が確定し、最年少「四冠王」に。18年12月には最速、最年少で公式戦100勝目を挙げている。19年2月、全棋士が参加する棋戦で2連覇した。

 タイトル獲得は時間の問題とみられていたが、期待通りに結果を出し続ける底力と精神力には、つくづく驚かされる。

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 これまで対局経験のある棋士たちが「積んでいるエンジンが違う気がする」などと表現してきた“異次元”の強さ。いったい何が抜きんでているのか。

 将棋界ではここ数年、AI(人工知能)を搭載した将棋ソフトでの研究に棋士たちが力を注ぎ、自らを鍛えている。その中で藤井新棋聖は先を見通す圧倒的な力があるという。

 元々、詰め将棋で培った終盤の力には定評があった。さらにソフトを活用して磨きをかけ、序盤や中盤にも隙がなくなったと周囲はみる。

 4月に緊急事態宣言が出され、50日余り対局ができなくなった。その間、自分の将棋を見つめ直したことも大きかったようだ。

 棋聖戦と並行して行われている王位戦7番勝負でも、木村一基王位(47)に2連勝とリードし、ダブルタイトル獲得が現実味を帯びてきた。こちらも目が離せない。

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 幼い頃、対局に負けると周囲が困惑するほど激しく泣いていた。その少年が、あどけなさを残した17歳で棋聖となり、将棋界の新たな時代が幕を開けた。

 棋士の10代はまだまだ成長期。今回のタイトル戦を通して得たものも多かったはずだ。師匠の杉本昌隆八段は「初心を忘れず、周囲を気にしすぎず、自分の信じた道を突き進んでほしい」とエールを送る。

 タイトル保持者としてますます注目を集める中、さらなる活躍に期待したい。