「観光浮揚に」「感染リスク高まる」 長崎県内観光業界 期待と不安

乗客が降りた後、観覧車を消毒する従業員=佐世保市、ハウステンボス

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」が東京都を対象から外して22日に始まる。長崎県内の観光業界では、観光客増加への期待と新型コロナウイルスの感染拡大への不安が交錯している。「県外客が増え観光浮揚につながってほしい」「感染リスクが高まるのが怖い」。関係者らは感染と経済効果のはざまで悩みながら夏の観光シーズンを迎える。

 「県外客が増え、県全体の観光浮揚につなげたい」。佐世保市のハウステンボス(HTB)は観光需要の早期回復を期待する。
 6月19日から県外客の受け入れを再開し、一部休止していたアトラクションも7月1日から全面的に営業している。感染防止のため入場の際にはサーモグラフィーで検温。屋内アトラクションは定員を減らして定期的に換気し、観覧車は乗客が降りるたびに消毒する。対策に追われる担当者は「これまでも感染対策は徹底してきたが、さらに気を引き締め、万全の体制でお客さまをお迎えしたい」と話した。

 県と雲仙市の宿泊費助成を利用する県民の宿泊予約が多く入っている同市の雲仙、小浜の両温泉街。小浜温泉旅館組合の本多伸吉組合長(50)によると、事業が始まる22日以降の県外客の予約はまだ少ないが、東京からの宿泊客が多いのかなどを問い合わせる電話もあるという。
 全国的に感染者が広がる中での事業開始に、小浜の旅館経営者は「国はただ旅行を促すだけで、肝心の感染防止の責任を宿泊施設側に任せっきりにしている印象がある」と指摘する。

 政府が東京発着の旅行などを割引対象外とすることに関係者の心情は揺れる。
 「正直ほっとした」。五島市内のホテル支配人は、「東京除外」の一報に胸をなで下ろした。
 政府が除外方針を示した16日には東京の予約客数組がキャンセル。8月以降に計画されていた関東方面からのツアー企画も見送りになりそうだが「仕方がない」。むしろ高齢化率が高く医療体制も万全ではない離島で、感染リスクが高まることのほうが怖いという。支配人は「経営は厳しいが、島の人に迷惑をかけたくないし、ホテルが発生源にもなりたくない」と複雑な胸中を語った。

 軍艦島クルーズを運航する軍艦島コンシェルジュ(長崎市)は、約4カ月ぶりに今月23日に運航を再開する予定。利用客の9割が県外からで、感染が広がる東京や大阪からの客も多い。夏休みでの挽回を目指すだけに、担当者は「感染は不安だが、東京が対象から外れると利用客数に影響する」とジレンマを口にする。利用客とスタッフが感染しないよう検温やマスク着用、船内の消毒などを徹底して利用客を迎えるという。

 


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