F1 Topic:外出が見つかると約183万円の罰金の可能性も。ハンガリーの新型コロナ対策事情

 今シーズン3戦目のグランプリとなるハンガリーGPが開幕したが、今年のハンガリーGPはいつものグランプリ週末とは少し雰囲気が異なる。

 ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、こう語る。

「ハンガリーではホテルとサーキット間の移動と、出国時の空港への移動のみが許され、それ以外はホテルからの外出が禁止されています」

 再開後のF1は、オーストリアでも基本的にサーキットを出たら、ホテルでの隔離生活を送っていた。ただし、それは自主隔離だった。

 EU加盟国の多くは、すでにEU加盟国からの入国規制を緩和しており、オーストリアでは外出制限に違反しても、FIAからの罰則はあるが、政府から罰金または懲役が科されることはなかった。しかし、ハンガリーはEU圏外となるため、オーストリアの隣国にありながら、状況は異なる。

 さらにハンガリー政府が新しい入国制限をグランプリ開幕直前の7月15日の午前0時から施行開始したことも混乱に拍車をかけた。新しい入国制限は、世界各国を新型コロナ感染状況に応じて『緑』『黄』『赤』の3つに分類し入国を規制している。

『緑』の国からは制限なく入国可能だが、『黄』の国からの外国人は入国時健康診断が必須で体温測定の結果、新型コロナウイルス感染の疑いがある場合は、当局指定の場所で隔離。新型コロナウイルス感染の疑いがない場合は、入国者がハンガリー国内に住居または滞在場所を有している場合は14日間の自宅隔離、そうでない場合は、当局指定の場所での14日間の隔離となる。そして、『赤』の国からは長期滞在許可書不所持の場合入国不可となる。

『赤』『黄』『緑』のそれぞれの該当する主な国は次の通りだ。

赤:ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、モンテネグロ、ウクライナ、カナダ、(日本、中国、韓国を除く)アジアなど

黄:ブルガリア、イギリス、ノルウェー、ロシア、ポルトガル、ルーマニア、セルビア、スウェーデン、日本、中国、アメリカ

緑:黄、赤以外の(ルーマニア、ポルトガル、ブルガリア、スウェーデン、ノルウェーを除く)EU加盟国、韓国

 F1は全10チーム中、7チームがイギリスに拠点を構えており、ホンダのHRD UKもイギリスのミルトンキーンズにある。チームスタッフのなかにはイギリス国籍以外のスタッフもいるが、全チームが小グループの集団行動を行っているため、約2000人のスタッフ全体が『黄』に該当する。

 したがって、新型コロナウイルス感染の疑いがなくても、ハンガリー政府が指定する場所での14日間の隔離となる。それがサーキットか事前に通知しているそれぞれのホテルというわけだ。

 ハンガリー政府によれば、「黄に該当する者は、公共交通機関やタクシーも使えない可能性があり、食事はすべて指定された場所内か宿泊施設内で取り、自由時間はその敷地内で過ごすこと」となっている。

 もし、ハンガリーGPでは外出が見つかった場合、いかなるF1関係者でも1万5000ユーロ(約183万円)の罰金または懲役が科される可能性がある。つまり、精神的なプレッシャーはオーストリアでの2週間よりも大きい中で、彼らはレースを行うことになる。

2020年F1第3戦ハンガリーGP木曜 ホンダF1 山本雅史マネージングディレクター&田辺豊治テクニカルディレクター
2020年F1第3戦ハンガリーGP パドックに設置された看板。2mのソーシャル・ディスタンスを保つよう促している

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