レッズ秋山に弟子入りしたBC栃木20歳野手 授かった教えと「来年は来るな」の意味

BC栃木・新山進也【写真:小西亮】

「ティー打撃をやるにしても、イチからあらゆることをイメージしてやっている」

メジャーリーガーを目の前に、ガチガチに緊張した。「オーラって言うんですかね。雰囲気がすごくありました」。西武から海外FA権を行使してレッズに移籍した秋山翔吾外野手が、同じ空間で汗を流している。ともに練習するメンバーもNPB選手ばかり。独立リーガーの自分は、少し気後れしていた。

ルートインBCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスに所属する新山進也内野手。松本第一高から独立リーグの世界に飛び込み、今季で3年目を迎えた。昨年11月には清原和博氏が監督を務めて話題になった「ワールドトライアウト」にも参加。NPBの舞台を目指す左投げ左打ちの20歳は、今年1月に思ってもみない”お年玉”に恵まれた。

知人を通じ、秋山が静岡県で行う自主トレに参加。ほかにもヤクルトの田代将太郎、阪神の板山祐太郎、DeNAの細川成也、西武の鈴木将平の4外野手がいた。かなり肩身は狭かったが、ひとつでも現状を打破するきっかけを得たいと飛び込んだ。

恐縮してなかなか話しかけることはできなくとも「全部盗んでやろうと思って、秋山さんをずっと見ていました」。秋山は決して特別な練習をしているわけでもない。自分と明らかに違ったのは「質」だった。「ティー打撃をやるにしても、イチからあらゆることをイメージしてやってらしゃるなと感じました」。超一流たるゆえんを垣間見た気がした。

秋山から貰ったお墨付き「そのスイングで大丈夫」

約2週間の貴重な時間。ずっとテレビで見てきた日本球界屈指のヒットメーカーからの助言は、忘れられない金言になった。これまで外角の球に対して苦手意識を持っていたが、秋山から「そのスイングで全然大丈夫」とのお墨付きをもらった。「これでいいんだって自信になりました」と素直にうれしかった。

それから半年が経ち、迎えた6月21日のシーズン開幕。埼玉武蔵ヒートベアーズ戦(栃木県営球場)に「7番・一塁」で初めて開幕スタメンに名を連ねた。6回の第2打席でどん詰まりながらも中前打を記録。「どんな形でも1本出たのは良かったです」と汗を拭った。

178センチ、98キロの大柄な体格で、期待されるのは放物線。オリックスのT-岡田外野手の打撃をイメージし「最低でも今シーズンは2桁ホームランを打ちたい」とノルマを設定する。まだ年齢的には大学3年生の世代だが「自分の中では焦りを持って取り組んでいます」と表情を引き締める。自主トレの終わりに、秋山からふと言われたことをいつも思い出す。

「来年は来るなよ」

自主トレは、ちょうど各NPB球団の新人合同自主トレの時期と重なる。「今年こそ、ドラフト指名されるようにアピールしていかなければいけません」。秋山塾の最短卒業こそが、一番の恩返しになる。(小西亮 / Ryo Konishi)

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