売り切れRAV4 PHVに何が起きた!? 次世代エコカーの花形「プラグインハイブリッド」が抱える課題とは

トヨタ 新型 RAV4 PHV BLACK TONE[E-Four(4WD)/ボディカラー:アティチュードブラックマイカ×エモーショナルレッドII] 撮影:島村 栄二

次世代のエコカーとして注目されるRAV4 PHV

新開発のプラグインハイブリッドシステム“THSII Plug-In”

トヨタ RAV4 PHVは、RAV4シリーズの最上級モデルで、PHVとはプラグインハイブリッド車であることを指している。通常のRAV4 ハイブリッドに対し、フロントモーターとインバーターを高出力化。ここに大容量・高出力な新型リチウムイオンバッテリーを組み合わせた。主にエンジンで充電するハイブリッド車とは違い、大容量のバッテリーに外部から充電することが出来るので、満充電時には95km(WLTCモード)のEV(電気自動車)走行が可能となっている。

こうした環境性能の高さから、RAV4 PHVは次世代のエコカーとして非常に注目が集まっていた。

要となる大容量リチウムイオン電池の生産能力に課題があった

トヨタ自動車Webサイトより

実は今回、新開発のプラグインハイブリッドシステム“THSII Plug-In”に積まれる大容量リチウムイオン電池に課題があった。生産能力に限界があったのだ。RAV4 PHV発表時にトヨタが発信したプレスリリースには月販目標台数300台と、極めて低めに設定されていたことからも推察出来る。

トヨタのRAV4 PHV公式サイトを見てみると『RAV4 PHVは現在、ご注文を一時停止させていただいております』とTOPページに表示されている。そこには『大変多くのお客様にご好評いただき、現在新規搭載のバッテリーの生産能力を大幅に上回るご注文をいただいております』と、注文一時停止の理由が記されていた。

経産省のクリーンエネルギー自動車(CEV)補助金も受注中止に影響

ただし通常の大人気モデルの場合、半年待ちや1年待ちといった状態を目にすることもある。購入者は待たせてしまうが、注文を一時停止にしてしまうのは珍しい。

これには、プラグインハイブリッド車の補助金制度が絡んでいた。RAV4 PHVは経済産業省の「クリーンエネルギー自動車(CEV)導入事業費補助金」事業の対象となっており、2020年度は22万円の補助金が交付されるのだ。

RAV4シリーズの最上級モデルであるRAV4 PHVは、大容量バッテリーなどコストがかさむこともあって、価格は469万円~539万円。RAV4ハイブリッド(約389万円~約351万円:4WDモデル)に比べれば、随分と高価なクルマだ。その差額を埋める補助金の存在はありがたい。

2021年度の補助金制度はまだ明らかにされていない

ところがこの補助金制度は年度ごとに制定され、来年2021年度の詳細はまだ明らかになっていない。仮に1年待ちとなった場合、販売店でも最終的な支払額が算出できず、正式な注文書が交わせない!という状況になるのだ。

ちなみに前出のRAV4 PHV公式サイトでも当初2020年6月の時点では、販売再開時期について『今後の生産および来年度の税制状況等を踏まえ、改めてご案内申し上げます』との記載があった。しかし理由は不明ながら『来年度の税制状況』の記載は2020年7月現在、表記からなくなっている。

RAV4 PHVの受注再開は早くとも2021年春以降か

リチウムイオン電池の圧倒的な生産能力の低さに加え、年度ごとに変わる補助金制度が絡んでいたRAV4 PHVの受注中止問題。再開時期はいつだろう。

根本的には、月販300台という生産能力を拡大するのが重要だ。バッテリーを製造するトヨタとパナソニックの合弁会社、プライム プラネット エナジー&ソリューションズが操業を始めたのは2020年4月1日のこと。公式な発表はないが、生産量を増やす算段をしている真っ最中であるはずだ。とはいえ数か月で生産キャパシティが拡大することは考えにくい。

前出のRAV4 PHV公式サイトでも『ご注文再開につきましては、今後の生産状況等を踏まえ、改めてご案内申し上げます』と記すに留まっている。

来年度の補助金の詳細が明らかになる時期も想定すると、年内のRAV4 PHV注文再開は厳しく、早くとも2021年春以降となるだろう、というのが現在の予想だ。

[筆者:トクダ トオル(MOTA編集部)/島村 栄二・トヨタ自動車]

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