【幕末維新 山口れきし散歩】 No.6「重岩」

▲人々を出迎え人々を見送る(山口市鰐石町)

 土佐藩士・土方久元は、1863(文久3)年1月、31歳の時、藩命により上京。そこで三条実美の信頼を得た彼は、同年8月18日、公武合体派による政変で尊王攘夷派が失脚すると、実美に従い長州へと西下した。

 「今日は頗る多忙にて三条公御殿へも両度参上。暮頃より重岩辺へ納涼に散歩。九ツ時頃帰宿」

 これは久元の、1864(元治元)年7月7日付の日記である。当時、長州藩では、遊撃軍や三家老率いる大軍が次々に上京。だが、この計画がやがて禁門の変へと発展してしまう。久元の同志、久坂玄瑞、入江九一、寺島忠三郎らは、重岩を二度と目にすることはなかった。

防長史談会山口支部長 松前 了嗣

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