新型ウイルスがイギリス人の家計に与えた影響 大打撃の一方で借金返済増える

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ヴィン・ピーチー、個人資産管理担当記者

新型コロナウイルスのアウトブレイク(世界的流行)はイギリス人の家計に大打撃を与えている。

しかし、その影響は普遍的ではないし、平等でもない。何とか乗り越えられるのか、それとも厳しいのか。年齢や仕事、住む場所、そして新型ウイルス拡大前の経済状況によって変わってくる。

まず初めに、収入への影響だ。働く人は収入の大部分を、給与に依存している。つまり給与の増減が収入の多い少ないに直結している。

数百万人が減給に

900万人以上が仕事を休んでいるが、職を維持するために国から賃金が支払われている。つまり、一時帰休に置かれた状態だ。

これまでのところイギリス政府は、労働者の給与の8割を補填(ほてん)している。全ての雇用主がこれに上乗せする余裕があるわけではない。

つまり、イギリスでは数百万人が賃金20%減の状態にある。政府の雇用維持制度では、1人あたりの補助は月額最大2500ポンド(税込、約33万円)の限度額が設定されている。そのため、減給幅がさらに大きい人もいるかもしれない。


英歳入税関庁(HMRC)のデータによると、一時帰休の対象になった可能性が最も高いのは、17歳の労働者だ。その中でも特に女性の比率が高い。

40歳代の男性と41~58歳までの女性は、この制度の対象になった可能性が最も低い。

一時帰休制度が徐々に廃止されるに伴い、多くの雇用主はスタッフの雇用を維持しづらくなる可能性がある。政府は雇用を維持し、一時帰休となっている労働者1人につき1000ポンド(約13万6000円)を支給すると約束しているものの、雇用主にとってのコスト増は雇用削減の要因になり得る。

自営業者は、「自営業収入支援スキーム」という異なる政府の支援を受けており、約270万人が利用している。つまり、自営業者の多くも減収に見舞われているわけで、この支援制度は夏が過ぎれば中止される。


加えて、仕事の依頼がなくなったり、失職した人たちがいる。多くの若い労働者は不安定で一時的な仕事に就いていた。こうした労働者の今後の見通しは非常に不透明だ。

特に状況が厳しいのは若者

10年前の金融危機の最中での不況(経済の大幅な低迷)では、失業リスクが最も高いのは若い従業員だと示されていた。

リシ・スーナク英財務相は、「イギリスがこれまでに直面した中で最も厳しい不況の一つに突入しつつある」と述べている。そうなれば失業率は前回よりも悪化する恐れがある。


低所得あるいは失業した就労年齢の人は、給付金を申請しなくてはならなかった。初めて申請する人や、しばらく申請していなかった人は、ユニバーサル・クレジット(低所得者向け給付制度)を利用することになった。ロックダウン(都市封鎖)が常態化したため、申請数は急増した。


債務に特化した慈善団体によると、給付金の支給額では足りない。

収入が減れば、債務返済が難しくなる。

繰り返しになるが、これについても若い人たちが最も厳しい状態に置かれがちだ。若者は貯蓄が少なく、家賃など生活に不可欠なもの支払いが大きい。

一方で全体を見ると、休暇や外食など生活に不可欠ではないものに支出する機会がなくなったおかげで、ロックダウン中にむしろ貯蓄を増やした世帯もたくさんある。しかし、貯蓄を最も増やしたのは年齢が高い人たちだ。


貯蓄している人も

年齢が高い世代はは、外食や休暇など、生活必需品ではないものに使うお金の割合が大きくなる傾向にある。

そしてロックダウン中は単純に外食や旅行などができなかったため、結果的に一部が貯蓄へ回ったのだ。


平均すれば前向きな結果だが、こうした全体像だけを見てしまうと、大変な思いをしている人たちの存在が見えなくなる。危機の中で頼りになる資金が必要な人たちほど、貯蓄が全くないかもしれないのだ。

そして、従来より貯蓄が増えた人たちは、今後外出して、貯めた金を使うのだろうか。これが大きな疑問となっている。

借金返済についても同様だ。ロックダウン中には預金口座の当座貸越やクレジットカードの未払い分が、一気に劇的に返済された。これは複数のデータが示している。借金返済の金額が、新規借り入れの額を大きく上回ったのだ。


なぜなのか? それは、店先でクレジットカードを使う機会がなくなったからだ。小売店のほか、特に旅行サービスは休業状態になった。ロックダウン中に旅行の予約がキャンセルになり、おそらく何カ月も前に支払った代金がクレジットカードの口座に返金された人もいる。

将来への不安感から、銀行の当座貸越を使ってまで車や新しいキッチンなどの高額商品を購入しようという意欲も、減退したかもしれない。

未払いの請求は

収入がひっ迫し、公共料金など主な生活費の支払いに苦しんでいる人もいる。住宅ローンや家賃の支払いを数カ月延期する措置を活用した人も大勢いる。

ガスや電気などの他の請求についても同様の対応が取られている。


こうした延長措置は今秋までに終わる。そうすれば、家賃や住宅ローン、公共料金は払わなくてはならない。請求額はむしろ前より多少増えているかもしれないのだが。

それでも家賃や公共料金などの生活費を払って、元通りの生活に戻れるのかどうか。それができるかどうかで、その世帯の今後の財政状況が大きく変わってくる。抜け出すのに何年もかかる借金の穴に陥らないためにも、秋の時点で生活費が払えるようになるのが不可欠だ。

製作:ダニエレ・パンボ、ダニエル・ダンフォード、デイヴィッド・ブラウン

(英語記事 The virus's effect on jobs and money - in eight charts