長崎県観光出足鈍く「GoTo」開始 感染拡大で宿泊キャンセルも

閑散とした大浦天主堂近くの土産店が並ぶ通り=長崎市南山手町

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」が22日始まった。キャンペーンに後押しされて来県した観光客の姿もあったが、平日とあって出足はいまひとつ。長崎県内では新型コロナウイルスの感染拡大で宿泊施設や交通でキャンセルも出ており、観光需要喚起策は静かなスタートとなった。

 午前9時過ぎ、初の感染者が確認された五島市の福江港ターミナル。ジェットフォイルで到着した愛媛県の50代夫妻は、市内から感染者が出たことを記者から知らされ、「あ、そうなんですか。知らなかった…」と驚いた様子で語った。
 夫妻は長崎県の宿泊助成やキャンペーンを利用し、21日から3泊4日の日程で県内を旅行中で「五島は2年前の世界遺産登録からずっと行きたいと思っていた場所」。だが、市内で感染者が出た影響で、22日に参加する島内観光ツアーは急きょ一部の教会が外観のみの見学となった。夫妻は「五島も(感染者がいないので)大丈夫だと思っていた。愛媛も感染者が少ないので、感染により気を付けて観光を楽しみたい」と話した。
 感染者の増加が続く長崎市。大阪府の男性(30)は出発前、本県の感染者数をインターネットで確認。「マスク着用や手指消毒などで感染を防げるのか不安だったが、キャンペーンが後押しとなった」。友人3人と長崎市のグラバー園を訪れた広島市の女性(65)は「長崎は広島より感染者が少ない。人混みを避けてマスクを着用して感染しないよう気を付ける」と話した。福岡市の男性(35)は「感染者が増え、若干の不安はあったが、対策を十分にすれば大丈夫だと思う」。
 県内で広がる感染は、観光客数に影響を及ぼし始めた。感染者が確認されたばかりの五島市だが、宿泊施設や空の便などで予約キャンセルが出ている。市内のある観光関係者は、感染者が増えていることを踏まえ、「なぜ(キャンペーンの)スタートを延期できないのか。市内でも感染者が出ている状況で、観光客にも感染者が出れば医療機関はますます大変になる」と不安を口にした。
 長崎市銅座町のホテル「カンデオホテルズ長崎新地中華街」の23日からの4連休の稼働率は約65%。県内で新型コロナが広がったことでキャンセルが増え、同ホテルは「もう少し予約がほしかった」と嘆く。
 政府の準備不足を指摘する声も。国が用意する書類のうち、客が割引申請するための書類の一部が間に合っていない。雲仙温泉街のある旅館の支配人は「客が準備して、申請してもらうしかない。客も旅館も手間がかかる」と困惑する。

長崎発のジェットフォイルで、五島に到着した観光客や帰省客ら=五島市、福江港

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